八王子市夢美術館-北斎展

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 八王子市夢美術館で開かれていた「世界が絶賛した浮世絵師 北斎展」を観てきた。当初4月9日から6月6日までの開催がコロナの影響で途中休館となり、開催されて今日までというものだった。

 HPを見ていて20日までということで本当に急遽行くことにした。北斎については小布施の北斎館にも行ったし、西洋美術館で行われた「北斎ジャポニズム」も行った。その他でも富士美などで所蔵している作品を観ているので、多分主要な作品はだいたい観ていることになる。とはいえこうやってまとまった企画展となれば、どうしても観たくなる。

 作品は北斎の年代と改名にそって以下のような形で展示されていて、ある種北斎クロニカル風になっている。。

1.北斎習作期~春朗の時代~

2.北斎修行・壮年期~宗理・可侯・不染居・北斎戴斗の時代~

3.風景画完成期~北斎改為一の時代~

 北斎は改名すること30回、転居すること93回はつとに有名だ。この展覧会でも北斎の年表とともに、北斎の改名した名前の一覧が掲示してあった。そして90歳と当時にしてはおそろしく長命である。しかも代表作ともいうべき『富嶽三十六景』、『諸国瀧廻り』、『諸国名橋奇覧』などは、すべて70を超えてからの作品といわれている。

 北斎の絵とは別にその事績や記録について、どの程度まで研究がされているのかはよく判らないけれど、自分などは北斎を名乗る絵師は複数いたのではないかとか適当に思ったりもしている。多数の作品群も複数の人物が描いていたとすれば納得がいく。筆致やスタイルに統一性があるとしても、そもそも日本画狩野派琳派のように流派や様式、画法が伝承されていく部分もあるので、北斎スタイルによって描くことも可能だったのではないかと。

 葛飾北斎のイメージ、奇人として伝えられる部分は、明治期の美術史家飯島虚心が書いた『葛飾北斎伝』によるところが大きいという。虚心は北斎を知る人たちからの聞き書き北斎の書簡をもとに評伝をまとめているが、公式的には北斎は1849年に没しており、1841年に生まれた虚心が直接北斎を知る訳でもない。評伝は1893年、虚心52歳の作でもある。現代よりははるかに沢山の一次資料があっただろうとは思うけれど、北斎がたった一人の人物であったのかどうか。

 まあこれは適当に思ったことであり、あの作品群は江戸時代後期に長命な天才画家によって描かれたものとするのが妥当だろうとは思う。でも北斎というのがある種のコピーライトであり、登録商標のようなもので、その名によって複数の絵師が作品を描いたというのは楽しい想像かもしれない。

 今回の企画展では北斎の『富嶽三十六景』に影響を受けたフランスの画家アンリ・リヴィエールによる『エッフェル塔三十六景』も展示してあり、これもまた楽しかった。

アンリ・リヴィエール - Wikipedia

BnF - フランスと日本

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