ホテルを10時過ぎに出て再び伊勢の内宮方向を目指す。前日行けなかった伊藤小坡美術館。伊藤小坡は上村松園と並ぶ女流画家で。もともと猿田彦神社宮司の長女として生まれたということもあり、猿田彦神社に近接したところに美術館が設けられている。
美術館の規模としては青梅の川合玉堂美術館とほぼ同等。2011年にリニューアルされたということだが外観、内装ともにとても美しい美術館だ。
小坡はもともとキャリアの初めの明治から大正期には日常風俗を描写する絵を描いていた。明治38年に同門の画家である伊藤鷺城と結婚し三女をもうけている。美術館には小坡が三人の娘と一緒にいる写真もあったが親密な雰囲気がある。小坡は妻として母としての日々を送りつつ、画業をおろそかにすることなく女性の日常生活を活写したような風俗画を描き続ける。
その後、大正から昭和にかけて新たな画題として歴史や物語を主題にした女性像を描くようになる。つい先だって観た高崎市タワー美術館での名都美術館コレクション展での小坡作品も、また今回小坡美術館に展示してあったものも、そうした歴史・物語に依拠した作品が多かった。