『三人の名付親』を観る

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 前日の『捜索者』に引き続きジョン・フォードジョン・ウェイン映画である。これもBSで録画してあったものを観た。

三人の名付親 - Wikipedia

 もともとはピーター・B・カインの小説で、三人の銀行強盗が荒野で瀕死の妊婦の出産に立ち会い、子どもの名付け親となる。彼らは改心して赤ん坊を町まで送り届けようとする。三人の悪人は子どもの出産に立ち会い町まで導く様は聖書のエピソードを翻案しており、子どもを届ける町の名前はニューエルサレムになっている。三人はあたかも東方の三博士のようでもあり、子どもはもちろんイエスである。

 聖書のエピソードを西部劇に脚色したストーリーはハリウッドで好評だったようで、この小説はこのジョン・フォードの映画を含めて6回も映画化されている。

Three Godfathers (1916) Harry Carey

Marked Men (1919) Harry Carey

Action (1921)

Hell's Heroes (1929) directer by William Wyler

Three Godfathers (1936) Chester Morris

3 Godfathers (1948) John Wayne

  1916年の最初の映画化と1919年の映画化(フィルムが失われている)の主演はハリー・ケリーで、今回のフォード映画では冒頭でハリー・ケリーへの献辞が捧げられている。さらにはハリー・ケリーの息子ハリー・ケリー・ジュニアが初めてジョン・フォード映画に抜擢されていて、以後バイ・ブレイヤーとしてフォード一家の一人として活躍していく。

 この映画にはジョン・フォードジョン・ウェイン映画のパターンというか要素がすべて詰まっている。人情劇、ユーモア、ペーソス、抒情などなど。そして主演のジョン・ウェインと共に脇を固める役者もフォード映画のお馴染みのワード・ボンドが保安官役でいつもの演技をみせている。

 ワード・ボンドはこの映画では初老の保安官役で、ジョン・ウェインよりはかなり年長という設定だが、彼は1903年生まれでこの映画製作時には45歳である。ジョン・ウェインは1907年生まれでこの映画時には41歳でワード・ボンドとは4つしか違わない。ワード・ボンドはその顔立ち、雰囲気から実際の年齢よりは相当上の老け役を演じることが多かったようだ。彼が1960年に57歳で死んだのは意外な気がする。というのは60年代以降のジョン・フォード映画、ジョン・ウェイン映画にもみんな彼が出演しているような気がしてならないからだ。ある意味ジョン・ウェインの片腕みたいな感じでいつも脇にいるような存在だった。

 ジョン・ウェインとともに銀行強盗役に扮したメキシコ人ペドロ・アルメンダリスはその独特な風貌からメキシコ人役、東洋系、アラブ系などの役柄をこなした。『007ロシアより愛をこめて』で諜報部のイスタンブール支局長役をしていたのは割とよく覚えている。たしかライフルでの狙撃の時に肩をかすシーンがあったような気がする。アルメンダリスはこの映画出演直後に51歳でピストル自殺をしているとか。