PCR検査の結果

 PCR検査の会計が終わった後にもらった案内には陽性の場合、翌日の昼までに連絡があると書いてあった。会計の女性は明日の3時頃までに連絡があると思いますと言っていた。そのときに確認しなかったのだが、陰性の場合はどうなのか。案内書には陰性の場合、3時くらいまでに連絡がなければ陰性と書いてある。ようは陽性の場合は連絡があるけど、陰性の場合は連絡がないということのようだ。さらにいえば陽性の場合には、クリニックから保健所にも連絡がいき、保健所からも連絡があるので今後については保健所の指示を受けるということのようなのだ。

 なので今日は朝からずっと待ちである。昼まではけっこうドキドキ状態だった。もし陽性だった場合、仕事を辞めている自分の社会的影響は最低限に抑えられる。でも自分1人が隔離されたり入院した場合は、カミさんの面倒をみる者がいなくなる。カミさんも陽性となると二人とも隔離なり入院となる。子どもも濃厚接触となり、会社関係にも影響がでる。自分だけが陽性でカミさんが陰性の場合でも、カミさんはデイサービス等も控えなくてはならない。そういう諸々を考えると感染による影響って、うちのようは小さな小市民の生活でもけっこうある。

 自分1人陽性、夫婦ともに陽性といったことについて思案というか、頭の中でぐるぐると思いが巡る。そんな風にして午前中が終わり、昼過ぎになっても連絡はない。これで陰性は確実かなとも思ったが、なにせ医療現場は混乱している。昨日のふじみの救急クリニックのオンライン診療も14時半の時間に接続しても先方からの応答がないまま数時間放置されて結局できなかった。それを考えると昼までに連絡が大きくずれ込む可能性もある。ということで3時過ぎなんとなく多分陰性だろうという希望的観測をもとに漫然と時間を過ごした。

 結局4時少し前に案内に書いてあったPCR検査のための専用電話番号に連絡をしてみると、最初はなかなか繋がらなかったが、何回かかけているとようやく繋がり男性の方が対応してくれた。そこで昨日、PCR検査を受けた者として名前等を告げて結果を聞いてみると、自分もカミさんも陰性であるということだった。

 まあ多分大丈夫だろうとは思っていたが、こうやってきちんと確認できないとやはり不安である。何時までに連絡なければ陰性といわれても不安は残る。それを思うとやはりこのPCR検査のやり方は若干不満もある。できれば電話で必ず陽性、陰性の連絡がある。それが人的資源や回線の問題で難しいようであれば、専用サイトで検査結果が確認できるようになっていれば一番簡単ではとか思ったりもする。とはいえそのへんは民間医療機関ではなかなか難しい。

 それを思うと、なぜこういう検査体制を公的なサービスとしてできないのかという根本的な疑問が残る。民間の一医療機関でドライブルスルー方式のPCR検査が可能なのである。行政が資金、技術、人など社会資源を投入すればもっと広範囲で簡便に検査を受けることは可能だったのではないかと思う。

 時間的余裕は春先は無理だったとしても、今は11月だ。緊急事態宣言明けのあたりから準備を進めていれば、誰でも無償、もしくは保険適用でいつでも、何度でも検査が受けられたのではないのか。それを検査体制、医療体制の整備を充足させないままで、経済を回すというお題目のもとにGoTo事業を見切り発車させてきた。

 普通に考えて検査を充実させて、陽性者を隔離治療させ、陰性者だけで日常生活を行う、経済活動を行っていくのが、感染対策を行いながら経済を回すことではないのかと思うのだが、この国の感染症対策はとにかく最初から検査に否定的だった。やれ偽陰性だの擬陽性だのと検査の実行性、確実性に疑義を唱えたり、検査を増やして感染数が拡大すると医療が崩壊するといったことが喧伝された。

 とにかく感染を抑えるのではなく、感染者数を低く抑えるというのがこの国の感染対策の基本だったと思う。多分それは多くの識者が指摘するように、夏に行われる予定だったオリンピックのためだったのだろう。オリンピックを予定通り開催するために感染が広げてはいけない。感染を抑えるために手っ取り早いのは、検査を抑制して感染者数を低くすることだ。ようはそんな小手先の数字のマジックを弄しようとしていた。

 その結果どうかというと、この国の感染対策は隣国、中国、台湾、韓国などに比べて極めて劣弱なままである。感染爆発が起きているアメリカに比べても検査体制は大きく劣っている。この国ではまだまだ市民が自由に検査を受けられる状態になっていない。発熱症状がある、感染者との接触がある、といった一定の条件のもとで民間医療機関に頼ってようやく検査ができる状態なのだ。

 さらにいえば、症状がない、感染者との接触がないと、たかだか鼻を綿棒でほじほじされるだけで1万円の費用がかかるのだ。ちっともそれは先進国的ではないと思う。今回、PCR検査で陰性の結果が出て正直ホットしている。自分はもう熱もないので、多分昨日までの発熱はただの風邪だったのだと思うが、PCR陰性によりとりあえず人にうつすリスクだけは避けられる。

 もちろんその安心は今だけのことだ。リタイアしたとはい週末には買い物にスーパーに出かける。週に一度くらいは美術館に行くこともある。電車で都内に出ることだってある。できれば月に一回、もしくは2週間に一度程度は検査を受けられた方が安心だと思う。それを思うと毎日、都内まで電車に乗って通勤している子どもなどは、日々感染リスクに晒されているわけで、本人の陽性、陰性を含めて不安のなか生活をしていることになる。

 全員が月に1~2回検査を気軽に受けられて、陽性者は休んで治療を受ける。陰性者だけが日常生活を送る。たぶんそれがコロナ下での新しい日常性ということなんじゃないのかと思う。

 今回、自分とカミさんはPCR検査を受けられて本当に良かったと思っている。でも一度きりでは安心は長続きしない。今回の検査で得たのは、今だけの安心でしかないということ。