都内で彷徨う

 午前中、健保に支払いの用事がありお茶の水まで行く。14日、15日と連荘で出かけているから2週間ぶりの都内である。その後はまったく予定もないので、大田区にある川端龍子の記念館にでも行ってみようかと思った。検索してみると最寄り駅は都営地下鉄浅草線西馬込駅で、そこから15分くらい歩くという。そうなると神保町から三田線で三田で乗り換えとなる。楽勝気分だったのだが、ここのところの寝不足もあり座るとすぐに寝落ちする。

 気がつくとちょうど千足駅に着いたところ。

 千足?

 ちょっと状況が理解できないまま電車は動き出して次は大岡山という。よくわからないままその大岡山で降りる。大岡山って、確か東工大があるところだ。そこから再度乗換案内等を調べると、やれ大井町線に乗るとか、訳の判らない路線が案内されるので仕方なく戻ることにする。

 戻りの電車に乗ってから調べると、今自分が乗っているのはどうも東急の目黒線ということらしいのである。そうなると再度、三田まで戻って再度浅草線に乗り換えてということになるらしいのだが、けっこうな時間のロスになる。これはちょっと今日に限っては川端龍子は縁がなかったなと諦める。取り合えず竹橋のMOMATでも行ってみるかと思い大手町に出て東西線で一駅で竹橋まで。

 しかし都内の地下鉄は私鉄との相互乗り入れが多く、寝過ごすと私鉄の終着駅まで行ってしまうようなことが多いのだとか。しかし三田線が目黒の先まで行っているとはちょっと想像できなかった。

 自分が営業をしていたのは90年代なので30年近く前のことになる。とはいえ毎日のように都内や首都圏の書店に出向いていたので、土地勘とか電車の乗り継ぎには割と自信があるほうだと思っていた。とはいえ如何せん30年前のことであある。2000年前後から地下鉄と私鉄の相互乗り入れはさかんに行われることになった。

 例えばいつも利用している東武東上線についていっても、乗り換えなしで中華街まで行けてしまう時代なのである。きちんと路線図を確認し、乗り継ぎとかをチェックしておかないととでんもないことになる。そういうものなのである。ちょっとばかり寝落ちするだけで思ってもみないところにということになる。さらにいえば都内の駅や街の風景がここ十数年でえらく変わってもいる。

 毎日新聞の地下で昼食をとり向かってみると、見事にお休みしている。展示替えのため閉館中とのこと。そういえばピーター・ドイグが終わったばかりで次の企画展は確か「ねむり展」だったか。西洋美術館のルーベンス『眠る二人の子ども』のポスターを見たよう記憶がある。ここは展示替えで1~2週間くらい休むことよくあるので調べずに行くとこういう目にある。

 さてとそうなると何処へ行っていいやら。上野はどうか、西洋美術館もロンドン・ナショナル・ギャラリー展が終了したばかりなのでおそらく休みではないか。調べてみるとなんと館内施設整備のため10月19日から来年春まで全館休館という。西美が長期休業というのは正直痛い。こうなるとたまに都内出てきても美術館難民みたいなことになってしまう。

 とぼとぼと埼玉の奥地まで帰るかと思ったが、そういえばここしばらく三菱一号館美術館に行ってないなと思い調べてみると、ちゃんとやっているようである。しかもロートレックとルドンの企画展である。天気もいいので竹橋から東京駅まで歩くことにする。ウィークデイの昼下がり、多くの働く人たちを後目にこっちはのんびりと余裕かまして歩く。こういうのは本当にリタイアしたオッサンの小さな幸福かもしれないなとしみじみ思ったりもする。

 竹橋から東京駅までは15分くらいだっただろうか。ちっとも苦にならない距離という感じだ。途中で作業着を着た人が懐かしいマジソンバッグを持っているのを見かけてびっくりした。これも後で調べるとどうも復刻版が発売されているらしい。

 丸の内周辺でマジソンバッグに遭遇というのも妙な気分だった。