別荘地・分譲地管理費トラブル

 昨日の朝日夕刊一面の記事。まあこんな記事が一面に載るくらいなので、他に記事ネタがなかったのかなとか思いながら、けっこう面白く読んでしまった。

 別荘地の私設水道代の管理費を巡るトラブルということらしいのだが、水道代となるとライフライン、インフラの問題も含まれている。私設水道は開発当時の会社がボーリングしたものであるというのだが、すでに公共水道が私設水道管に分水されているというのもややこしい。さらに元の開発会社が経営破綻して事業継承会社が幾つも代わっているとも。

 別荘地やリゾートマンションもだいたいがバブルの頃の産物であることが多い。大昔勤めていた出版社もバブル期末期に銀行の口車に乗って、金を借りて首都圏にマンションを数件、さらに湯沢にリゾートマンションを2件所有していたが、バブルが弾けるとたちまち経営破綻した。あの頃に建ったリゾートマンションなんかもそのクチだと思う。

 今、その手のマンションは二束三文で、当時数千万したものが数百万円台になっているものも多い。こんなに下がったのか、けっこう設備良かったし買おうかみたいなこと考えたことない訳でもないが、よくみると管理費が半端ないことが多い。だいたいにおいて管理費、修繕積立、共益費等を含めると5万を超えるものが多い。知人から熱海にあるマンションを只同然でいいから引き取らないかと持ち掛けられたこともある。そこも管理費は都内のアパート並みだった。もちろん即効断った。

 別荘やリゾートは管理費がかかるというのがなんとなくわかっているけれど、その管理費の内訳となると、今回の記事のごとく使途や名目が明らかに不明なものも含まれているということなのかもしれない。リゾートマンションの場合、管理会社にとっては管理費が収入のほとんどであるから、事業継承にあたっては管理費で年間このくらいの収益があるみたいなことが必須要件なのかもしれない。

 しかし実態のない名目を含めた管理費というのはどうなのかという点がある。住宅名目のマンションであれば管理組合が管理会社と契約を行う。管理費が高い、サービス内容に問題があれば、総会を開いて管理会社を替えることもできる。しかし別荘地、分譲地となるとそういうことも難しい。

 さらにいえばだが、そもそも水道やガスといったインフラの維持管理を住民が一方的に負うことにも問題はあるのではないか。もし管理会社が施設老朽化等を理由に維持管理費を二倍に上げた場合、住民は従わなくてはならないのか。もともと水道やガスは分譲地を購入した際の費用にはまったく計上されていないのかどうか。

 別荘を買うのは金に余裕のある人たちなんだから、こういうのは自己責任という突き放した見方もできるかもしれない。でも中にはなけなしの蓄えをはたいて「穏やかな老後を送ろうと移住」した人たちもいるのだろう。

 社会的インフラ部分を安易に民間にまかせた場合どうなるのか。今、水道民営化が密かに現政権を中心に進められているとも聞く。民間の方が効率的で競争原理が働くので料金が安くなるという意見もある。しかし一方で業績が悪くなれば、当然料金は値上げすることもあるのだろう。社会的インフラである以上、住民の側からは別の選択肢を選ぶということが難しい。

 社会的インフラについては民営化すべきではないと自分は考える。それはライフラインに直結しているからだ。水道は当然公営化であり続けるべきだし、電気、ガスについても公益性が高いということで単なる私企業にまかせるべきではないとも思う。現に電力会社はその送電網を維持管理するために公益法人的な色彩も強いし、料金も包括原価方式も認められている。

 しかし別荘地、分譲地での管理費トラブル、多分住民の多くは高齢化している。もちろん別荘に住むという意味では富裕層が中心なんだろう。一方で高齢化社会セカンドライフみたいな部分を含め、市場が活況を示しているとはとても言い難いのだろうとも思う。だからこそ開発会社が経営破綻したり、事業継承会社が入れ替わるというということにも繋がっているのだろう。

 右肩上がりの社会であればこうした問題は起きないし、記事ネタにもならないのかもしれない。管理会社が破綻しどこも引き受けなければ、さらに住民の自助努力も限界になれば、夢の別荘地は一気にゴーストタウン化していくにちがいない。今、あちこちでバブル期前後に住宅地として開発が進んだニュータウンが老人だけの町と化し、ゴースト化も囁かれている。同じことが別荘地でも起きていても不思議ではないか。