近代美術館再訪-ピータ・ドイグ展

 仕事というか、打合せというか、まあそのへんが割と早くに終わったので、近代美術館(MOMAT)に行くことにした。自粛解除後、西洋美術館、ポーラ美術館、東京富士美術館と美術館周遊を再開してきた。これでMOMATが加わると、ほぼ自分のベースになる美術館を回ったことになる。コロナは感染拡大が再び広がっているので、また自粛が始まるかもしれないが、まあ開いてるうちに何度か行ければいいと思っている。

 近代美術館の企画展はピーター・ドイグの回顧展だ。まったく知らない人だが、1959年生まれの61歳、現代絵画の「画家の中の画家」と称される人だとか。今はコロナの影響で日時指定制をとっているというのだが、受付の人に聞くと普通に当日券で入れるという。まあウィークデイで3時過ぎという時間のせいもあるのかもしれない。

ピーター・ドイグ展 | 東京国立近代美術館

 ピータ・ドイグはスコットランド出身の画家でゴーギャンマティスムンクらの構図やモティーフ、さらに映画や広告などからも着想を得た画風という。なるほどドイツ表現主義や晩年のムンクっぽいところなどがは少し感じられる。まあ作品の中にはホドラーとかルソーみたいなところとか、いろんな要素があるようにも思えた。ある意味、現代の画家らしく、引用という手法を取り入れているのかもしれない。

 商業的にも成功している人らしく、今回も出展されている「のまれる」という作品は2015年にクリスティーズで30億円で落札されているという。いわば売れっ子中の売れっ子ということだろうか。

 気になった作品をいくつか。

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ガストホーフ・ツァ・ムルデンタールシュペレ

 パンフレットやHPにも最初に掲載されている代表作なのだろう。人の目を奪うような魅力に溢れた作品だ。構図的には画面中央から湾曲して右に流れていく遊歩道(?)によって分割されている。全体的に深みのある暗い緑と青の色調、なぜかゆう報道の壁は色鮮やかな石が埋め込まれている。そしてその歩道の入り口に二人の人物が立っている。なんとも不思議な、幻想的な光景だ。

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エコー湖

 同じような絵柄だが、こちらはやや暖色を使っている。湖のほとりで男が1人、耳をふさいで、あるいは頭を抱えて立っている。湖は茶の入った黒。男の後ろにはよく見るとほぼ画面の中央にパトカーが1台止まっている。これはひょっとしたら事故か犯罪現場なのか。男は刑事で耳をふさいでいるのではなく、耳をそばだて何かの音を聞いているのか。これもまたミステリアスな絵だ。

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ラペイルーズの壁

 トリニダード・トバゴに移住したドイグが現地での写真をもとに描いた作品という。解説によれば小津安二郎の計算された静的な雰囲気が主題となっている。後ろ姿の人物はさしずめ笠智衆か。

 この絵はまたあまりにも静的な、張り付いてしまったような光景のためエドワード・ホッパーとの類推を指摘する解説もあるようだ。なるほど時間の止まったような一瞬といえないこともない。

 

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プロッター

 ドイグはトリダード・トバゴ移住後、現地の友人たちと誰でも無料で参加できる映画の上映会を定期的に行っている。そのための告知ポスターを制作しているのだが、その中から数十点が展示されている。これがまた映画好きからするとなんとも楽しいものとなっている。映画のタイトルはお楽しみということでとりあえず何点かを。

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