大量雇い止め、5月危機

 朝日の記事から。

 派遣社員非正規労働者を雇い止めするためには、更新の30日前に本人に通告しなくてはならない。3ヶ月ごとの更新で新年度の4月からの契約、6ヶ月ごとの更新で1月からの場合、いずれも6月が更新時期となるため、その1ヶ月前ということで「5月危機」ということになる。うちの会社でもパートさんは6ヶ月ごとの契約のため6月に更新となるため、給与の締めの15日の関係でつい先日に更新を行った。まあ業量自体は極端に落ちていないため全員更新した。

 雇い止めについては雇用側の勝手な都合から無闇に行ってはいけないという雇い止め法理が確立している。とはいえ新型コロナによる未曾有の経済危機である。感染症による経済的危機を理由にすれば雇い止めは簡単にできる。実際、売上の8〜9割減という状況も伝わるなかで中小零細には雇用を維持する体力もない状況となってきてもいる。 

 それにしてもだ、「5月危機」とこれから迫るような言い方だが、すでに5月中旬である。今、非正規労働者はおそらく2200万人くらいと想定されている。5%の雇い止めでも100万以上が職を失うことになる。新型コロナによる経済危機の拡大からするととても5%程度にとどまるはずもない。伝えられる状況では非正規だけでなく、正規社員でさえも雇用があぶない状況になりつつあるのである。「5月危機」はさらなる大失業時代の入り口となるのではないかと、そういう予感、いや実感がある。

 新型コロナウイルスによる緊急事態宣言は今月末には解除される見込みだが、現在のところ治療薬もない状態であり、いつまた感染拡大となるかはまったく予想できない状態だ。そんな中で自粛によって収縮した消費マインドが宣言解除で一気に拡大するはずもなく、景気が戻るには長い年月が必要になる。その落ち込みは直近の大不況となったリーマン・ショックの比ではなく、発表される報告からは1930年代の世界恐慌を上回るとするものさえある。

 今後、経済状況は最悪な状況に落ち込み、その回復に到るまでには長い長い年月を要する可能性があるのである。そのなかで経済的体力のない層が失業によって経済的困窮状態になっていく、その数が数百万人にものぼる可能性があるのだ。そこから生まれるのは様々な社会不安である。

 戦前の世界恐慌は結局のところ帝国主義の台頭と世界戦争を引き起こした。戦争によって余剰となった失業者は軍需産業と兵役によって吸収されていった。人類は同じ道を歩むのかどうか。感染症による国内の不満を外部に向けるべく、大国アメリカでは中国に対する非難の声が多くなっているという。

 大国同士が全面的な戦争状態になってしまえば、それは即世界の終わりとなる。そんなことは違いにわかっている以上、代理戦争や局地的な紛争による小規模、中規模な戦闘が行われる可能性が高い。世界のどこであれ、戦争が起きてはならないが、もしその局地戦が東アジアで起きることになれば、この国も渦中の中に巻き込まれていく。

 大量雇い止めによる大失業時代の到来。それはまさに地獄への入り口なのかもしれない。