なにか久々リビングで以前録画した映画を観た。
まずは山田洋次の『学校』。
1993年の作品、もう27年の前になる。この映画のことはもちろん知っていたし、けっこう評判となったからか続編、続々編が作られたこともなんとなく知っている。でも一度として観ようとは思わなかった。
自分的にはどうも山田洋次に対して苦手意識がある。あのベタな人情喜劇にしっくりこないというか、どことなく恥ずかしさを感じてしまう。なので国民的映画の寅さんシリーズも片手以上は観ているけど、多分両手以下だと思う。
そして人情喜劇路線とは違う、ややシリアスなものについても例えば高倉健の『遙かなる山の呼び声』も本当にだいぶ経ってからやはりBSかなにかでやっていたのを観たくらいだ。黒澤明がこの映画を『シェーン』の影響があると言ったとか言わなかったとか。自分も当然そう思った。しかし北海道の原野を描くとなぜか西部劇調になるのはなんでなんだろう。
劇場できちんと観たのは『幸福の黄色いハンカチ』くらいか。あの映画も武田鉄矢のクサさがハナについて今一つ好きになれない。まあ映画としてはそこそこよく出来ているとは思うが、あの映画の原案は確かドーンの『幸福の黄色いリボン』だったと思うけど、あの3分かそこらの歌の方がよっぽど出来がいい。映画も文学も一曲の歌に勝てないみたいな言い方を誰かがしてたと思うけど、本当にそう思う。
そしてこの『学校』である。夜間中学を描いた人間模様。類型的な人物像、よくあるパターン、ベタなエピソード。そういう諸々を抱えながらもよく出来ている。ひとえにそれは役者の力量によって支えられている。西田敏行、田中邦衛、竹下景子等ベテラン俳優が本当にみんな素晴らしい。そして若手俳優たちも萩原聖人、中江有里、裕木奈江等も生き生きと演じている。このへんは山田洋次の演出や演技指導の冴えなのかもしれない。
しかしこの夜間中学という題材、幸福を見つけるために学ぶというテーマ性、古き良き言葉でいえば勤労学生たちの青春群像。なんか60年代の『若者たち』と同じ匂いをかいでしまう。
山田洋次のベタさ、類型的な人物像、人情喜劇のクサさ、そうしたものに反発し、なんとなく食わず嫌いできてしまったが、こうした予定調和的に目頭をジーンとさせる感動作品もたまにはいいかもしれない。なまじ作り込み自体はしっかりとした作品だけにクサいなと思いながらも観続けてしまう。このへんは寅さんシリーズを50本なんなんと続けてきた力量なのかもしれない。