兄の転院

 大晦日に緊急入院した兄は今日、自宅近くでいつも透析をしている病院に転院した。

 脳出血もほとんど止まったようで、広がりもないので退院してもいいところなのだが、透析のために血をサラサラにする薬を投与しているのを再開してもいいかどうか、その判断を転院先でしてもらうための入院ということらしかった。

 もしその薬を投与することで、脳出血が再び始まったり広がったりすると場合によっては障害になることもあるので、病院側もかなり慎重になっているということだった。

 とはいえ、本人の調子も入院前にほとんど戻っているので、本人も退院したがってはいる。

 しかし、自分としてはこれもまた微妙である。暮れに蜂窩織炎が悪化して入院して28日に退院。大晦日に強風で転倒して救急搬送で入院である。なにかもう兄は一人暮らしが難しいのではないかと思っている部分もある。

 とはいえ一種一級の身障者を抱えた自分が、兄を引き取ることは考えられないところだ。なんとか自立していって欲しいが、もし難しいということであれば、なにか別のこともそろそろ考えなくてはいけないのかもしれない。

 思えば、2009年にほとんど音信普通だったのが急に連絡してきた。話を聞くと、会社を定年で辞めることになったが、白内障で手術しないと失明の恐れがあるという。しかし蓄えがほとんどなく手術代もないという。さらにカードローンで多額の借金もあるという。

 当時すでにカミさんの面倒みている立場でけっこうしんどいかったが、たった一人の肉親ということで出来るだけサポートをすることにした。住んでいるアパートを訪ねると完全なゴミ屋敷と化していた。そこでこのまま遠方には置いておけないと、まず兄の家探しから初めて、同じ埼玉県内に家を探して住まわせた。

 それからも2014年に自転車で転倒して救急搬送、緊急手術で左目失明。その時の医療費も当然のごとく自分が払った。

 さらにこれまでも何度か、透析にこない病院から連絡があり、その度に家に行った。一度は低血糖で倒れていたのを発見して救急車を呼んだこともあった。

 たった一人の肉親とはいえ、いつまでこんなことが続くのかと思うところもある。自分自身、すでに還暦を超えた身で、抱えきれない部分が多々あると思う。

 昨年暮れの入院の話が出たときから、じょじょに老人ホームや高齢者向け住宅のパンフレットを請求し始めてもいる。すこし本腰をいれてみようかとも思っている。