映画『ひろしま』と丸木位里

 昨晩、NHKEテレで映画『ひろしま』をやっていた。子どもと二人で観たのだが、なんとも衝撃的だった。

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NHKドキュメンタリー - 映画「ひろしま」<スタンダードサイズ>

ひろしま - Wikipedia

 原爆投下から7年後に広島の地で撮影され、広島市民8万人が撮影に参加したという。まさに被爆地だからこそ描くことができた被曝の実相である。

 日教組が制作し、制作費は全国の教員のカンパによってまかなわれたという。まさに教え子を戦場に送るなの精神が具現化されたともいうべき。日教組は日本の民主主義のフロントにいたのだと思うし、昨今の教育の荒廃、教員の過重労働は日教組の弱体化の影響が大きいと自分は思っている。

 しかし比較的映画を観ているはずの自分が、この映画の存在を実は知らなかった。実際のところそういう映画があることする知らないでいた。なぜか、時代的には朝鮮戦争の頃で、配給会社の松竹が反米色が強いということで配給を拒否した。教育映画として学校での上映も各地の教育委員会で反対され見送られた。

 様々な理由で各地での小さな上映会以外はほとんど上映されなかったという。まずは敗戦日本にとって戦勝国かつ事実上の宗主国アメリカの原爆投下を批判するものが上映されるのが憚れる、今風にいえばアメリカに忖度した理由が一番だろう。

 そして多分、原水爆禁止運動も共産党系、社会党系に分裂し、熾烈なヘゲモニー争いが始まる頃である。そうした中でこの映画の上映にとってはよくない環境が続いたのだろう。

 映画は究極のリアリズムで、被曝の有り様をこれでもかこれでもか描いている。この映画は録画したので、再見のうえでいろいろと書きたいとは思う。とにかく凄まじい映画である。

 そしてこの映画を観た衝撃、影響、諸々から、今日は東松山丸木位里の美術館を訪れた。

丸木美術館−丸木夫妻略歴と館史

 家から割と近いこともあり、何度か訪れているのだが、『原爆の図』本当に衝撃的だ。写真や映像では伝えきれないような悲惨さ、被曝の真実が芸術家の手により、見事に描き出されている。

 ほとんどすべての作品が四曲一双の屏風画なのは、もともと丸木位里水墨画を中心とした日本画家だからか。墨一色の作品が多い中、何点かは鮮やかな朱=赤が使われている。これは妻俊が洋画家であることの影響だろうか。ほとんどの作品が共作であるということだが、屏風画でありながらどことなく西洋画、特に宗教画を思わせるものがある。

 いつもはその凄惨な作品に目を奪われてしまうのだが、今回はなんとなく構図や表現みたいなものになんとなく目がいくような気もしないでもない。

 そうした点ではこの二つにみょうに心が動かされた。

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少年少女

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  構図、構成が秀逸でたしかにどことなく宗教画のような趣がある。鎮魂とでもいうのだろうか。