都内の地下鉄事情

 久々、カミさんと電車で都内へ出た。いやなに、MOMATへ行こうと思ったのだが、この時期は車で行っても北の丸公園の駐車場に駐めることができない。去年、行ったときも駐車場へ向かう道は塞がれていた。まあ、北の丸公園から千鳥ヶ淵のあたりは花見客でごった返すからしかたがない。そこで多少の学習から、電車を乗り継いで竹橋まで来たのだが。

 地下鉄東西線竹橋駅は、まずホームから改札口まで行くのにエレベーターがないのである。ホームにいた駅員に聞いてみると、「ここはエレベーターがないんです。車椅子の方はみんなで担いであげます」という。

 ウィキペディアで調べてみると開業は1966年、まだバリアフリーなどという概念がない時代のことだ。さらに記述を読んでみると、「エレベーターはないが、地下1階西側と1番線ホームを連絡するエスカレーターが設置されている」とある。

 しかし車椅子の利用者はエスカレーターではどうしようもないのである。仕方がなくカミさんを車椅子から下ろし、手すりを使って階段を登らせることにする。車椅子は自分が担いで上にあげる。カミさんは短い距離ならなんとかつたい歩きができる。とはいえ以前に比べると歩いたり、階段を登る距離も短かくなっている。

 しかし、これが都内の一等地の地下鉄事情なのだと思うと暗雲垂れ込める思いだ。これは多分、ベビーカーのお母さんたちも同じ苦労をしているのだと思う。

 改札からさらに地上に出るのもまた階段である。駅員からすまなそうにここは全部階段ですという返事。ここの階段も短い距離なので、カミさんには登ってもらう。しかし、繰り返すが都内の中心地、大手町近辺、皇居に隣接した一等地でこれである。なんというか営団地下鉄毎日新聞社には猛省を促したい思いである。

 MOMATで鑑賞を済ませてから、カミさんが久々千鳥ヶ淵の桜が見たいというので、車椅子を押してぐるっと回ってみる。そのあと半蔵門に出て地下鉄に乗る。ここはホームまで二度乗り継いでなんとかエスカレーターで降りることができる。

 それから永田町で有楽町線に乗り換えようとするのだが、半蔵門線のホームから上に上がるのにエレベーターがない。駅員に聞いてみると、ここはエスカレーターしかないというのだ。あの長い長いエスカレーターである。覚悟を決めて本来やってはいけないエスカレーターの車椅子乗りに挑戦してみる。と、駅員がすかさず、車椅子から降りてもらわないと利用できませんと。

 カミさんは動いているエスカレーターに移りことはできない。仕方なく、本当に仕方なく車椅子に乗せたままエスカレーターに乗る。ようは介助者がしっかりホールドしておけばなんとかなる。後ろから駅員が「責任とれませんよ」と声をかけてくるけど、これはもう仕方がない。だって、ずっとホームにいる訳にもいかないのだから。

 いつも一人で利用するときは、気合いと根性で右側を歩いて登るのだが、この長い長いエスカレーターがいつにもまして長く感じる。もしも自分がこけたりすると、これは大惨事ということになるのだろうなと、そんなことも頭によぎる部分もある。とにかくきちっと車椅子をホールドし、両足を踏ん張る。

 ようやく上まで行くと、今度は有楽町線のホームにも階段で降りる。短い階段なので車椅子をたたんで担ぎ、カミさんには歩いて降りてもらる。駅員が駆け寄ってきて、「お客さん、少し奥にエレベーターがあります」というが、「もういいです」と返事をして降りた。半蔵門線からの長い長い登りはエスカレーターのみで短い降りの有楽町線ホームにはエレベーターがある。都会の不条理みたいな感じである。

 多分、無計画に作ってきた地下鉄の延伸である。各線の連絡の利便性やバリアフリーなどという観点はまったくなかったのだろう。都市計画って重要だよなと思う部分だ。しかし来年にはオリンピックとパラリンピックが開かれる世界に誇る大都市東京の実相である。オリンピックはいいとしても、この都市はパラリンピックを開く資格には少しばかり欠けていると思わざるを得ない。