藤田嗣治〜本の仕事

 東京富士美術館に来た。昨日から始まったばかりの「没後50年藤田嗣治〜本の仕事」展を観るため。ここは1月6日に来たばかりで2回目である。まあ子どもが大学で先生から無料券をもらってきたということもあり、行ってみるかとなった。

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 藤田の仕事を本の挿絵や装丁にクローズアップをあてた企画展なのだが、これが思いの外面白い。藤田はもちろん画家としても超一流であり、ある意味で戦前戦後を通じて西洋絵画の世界でもっとも人気のある画家の一人である。ある意味大スターといってもいいだろう。

 その藤田が挿絵画家として、またデザイナーとしても、さらに戦後フランスへ帰ってから始めた、様々な職業を小さな子どもに扮しさせて描いた「小さな職人」という連作にみられるある種の風刺画。それらのどれをとっても見事というか、第一級の才能をみせている。

 藤田がもし現代に生きていたら、当時よりももっとワールドワイドな形で成功をおさめたのではないかと思ったりする。それはたとえばアンディー・ウォーホールなんかよりはるかに商業的に成功したのではないかと、そんなことを思ったりもする。

 戦時中、戦争画を描いたことで画家の戦争犯罪のすべてを被らされるという彼の悲劇、そのことにより日本を捨てフランスに帰化することになるのだが、彼のようなもともと自由人、バガボンドというのだろうか、そういうタイプの芸術家には国というアイデンティティなどどうでもよかったのだろう。そういう人間は今であれば、しかも彼のような才能に満ちた人であれば、アートの世界で、商業広告の世界で、とんでもないスーパースターになっていたのではないかと夢想してしまう。

 あと日本に嫌気がさした藤田がアメリカのはからいでいち早くアメリカに移り、そこで再婚した夫人が渡米するのを待っている間、日本のGHQの民高官シャーマンに毎日のように送った絵手紙がとても面白い。

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