出版流通 機能の限界

 朝日文化・文芸欄に載っていた。
出版流通、機能の限界 配送コスト増・雑誌不況、取り次ぎが負担要請:朝日新聞デジタル

6月21日 文化・文芸欄
 配送コストの上昇に苦しむ出版取り次ぎ大手4社が、出版社に追加負担を求め始めた。出版物の売り上げは一般に出版社(著者含む)70%、書店20%、取り次ぎ10%の割合で分配されてきた。だが最大手の日販は最大で4ポイント程度、増やすことを出版社に要求。全国津々浦々へ大量の本を一斉に届けてきた出版文化がに立つ。
 日販やトーハンなどは今春、出版社に文書を配布し、配送コストの追加負担を求めた。個々の交渉の詳細は明かしていないが、関係者によると、日販から書籍の取り分を4ポイント引き上げるよう求められた出版社もあるという。単純計算で出版社の取り分が66%に減り、取り次ぎ分が14%に上がる。トーハンも「手数料」として新たに支払いを求めている。
 雑誌については、出版社は取引金額の0・55%を「運賃協力金」として負担してきたが、日販はこれも0・85%、トーハンは最大1%程度まで引き上げることを打診しているという。
 配送コストの負担が重くなった背景には、物流の人手不足に加え雑誌不況の影響がある。雑誌が売れた時代には、連日の発売日に合わせて大量の雑誌を一斉に全国の書店に届ける際、「ついでに」送ることで書籍の配送コストを吸収してきた。だが2年前に書籍の売り上げが雑誌を逆転。出版流通の仕組みが機能しなくなり始めた。
 配送コストの上昇は取り次ぎの経営を直撃。日販は今年3月期決算で、創業以来初めて取次業で5億6千万円の赤字を出した。トーハンも5年ぶりの赤字になった。取り次ぎの要求に応じれば、年間1億〜2億円の追加負担が生じる大手出版社もあるという。
 出版流通に詳しい清田義昭・出版ニュース社代表は「書籍を発売直後に店頭に並べることにこだわらなければ、コストを圧縮する余地はあるのではないか。アマゾンなどに対抗するためには前提を排した議論が必要だ」と指摘する。
 (岩田智博)

 取次大手4社は日販、トーハン、大阪屋・栗田、中央社中央社が大手に入るのかどうかは微妙、かつ実質的にトーハンの子会社だということでみれば、日販、トーハン、大阪屋・栗田の3社による出版社への追加負担の依頼であり、これは今年の最初のことだったと思う。
 すでにこれに関しては3月に日経新聞が記事にしている。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO27886060Y8A300C1TJ1000/:TITLE

出版社に追加負担依頼 取次大手、物流費高騰が直撃
バブル期以来の値上げか
3月9日
 出版物の大手取次4社が出版社に対し、物流コストの追加負担を依頼した。アマゾンジャパン(東京・目黒)などネット通販の台頭に加え、人手不足による物流費の高騰が取次会社の経営を直撃している。実現すれば26年ぶり、バブル期以来となる。これを機にアマゾンと取引を拡大する出版社が増える可能性もある。
 取次最大手の日本出版販売(日販)のほか、2位のトーハン、3位の大阪屋栗田と、中央社の4社が値上げを出版社に依頼している。出版社は取次会社に「運賃協力金」という名目で雑誌の物流コストの一部を支払っている。出版社と取次会社の取引額に対し、一定の比率をかけた金額が協力金にあたる。
 比率は出版社の規模などで異なるが、トーハンと取引する多くの出版社が取引額に0.55%を乗じた金額を支払っている。1992年までに現在の条件となった出版社が多いが、トーハンはこの比率を0.70〜0.90%程度、日販も0.65〜0.85%程度への引き上げを打診している。
 トーハンは取引額が大きい上位300社程度、日販は上位150社ほどの出版社と交渉しているもようだ。対象となる出版社との取引額だけで両社の売上高の8〜9割に達するとみられる。
 日販は書籍の取引条件の見直しも進める。出版社から取次会社への卸売価格(正味価格)を引き下げるか、1冊あたり数十円の協力金の負担などを依頼している。
 関係者によると、大手出版社の負担額は年1億円ほど増え、中堅規模であれば2000万〜6000万円程度だという。4社から値上げの打診を受けた大手出版社はすべての取次会社の条件を満額で受け入れた場合、年間の負担額は1億円ほど増えるという。
 取次会社の経営悪化は周知されており、多くの出版社は条件付きで値上げを受け入れるようだ。ただ、出版社が支払う協力金は取次会社との「取引額」に比例するため、同じ冊数を取引する出版社同士でも、単価の高い本を中心に扱う出版社の負担感は増す。そのため「不平等だ」(中堅出版社の社長)という指摘も出ている。
 これを機に一部の出版社はアマゾンと直接取引拡大を検討するとみられる。同社も出版社に「協力金」を求めている。しかし返品率は1割以下とされ、取次経由の4割より低い。売上高も伸ばしているアマゾンとの取引は魅力的に映るようだ。