関根正二、古賀春江など

関根正二:信仰の悲しみ>

 大原美術館別館に行くのは初めてのことだ。最初に訪れた時にはそもそもその存在を知らなかった。二回目は時間がなくて行くことが叶わなかった。日本絵画が名品が多く収蔵されているということは割と最近知った。その中でも一番観たかったのが、関根正二の「信仰の悲しみ」だ。
 20歳で早世した画家の代表作だ。神経症に悩まされた青年が、日比谷公園で見たという幻影をキャンバスに表したもので、身ごもった5人の女性たちが腹部のあたりに果実を抱きながら野原を歩いている。中央の朱色の衣服をまとった女性だけがうつむいている。作者の女性観の複雑な諸相が複雑なまま描かれている、一種異様な作品だが、不思議と惹きつけられてしまう。
古賀春江;深海の情景>

 不思議と心に残る作品。日本のシュルレアリスムの先駆者古賀春江は様々に作風を変える人でもあり、多くの画家の影響を受け、そのスタイルを模倣し、自己の中に消化しようと努力を続けた画家だと思う。その作品には不思議な抒情性やポップ感が漂っており、都会的な雰囲気を醸し出してもいる。
 主にパウル・クレーの影響が強く、それは最近の近代美術館での古賀とパウル・クレーの並列展示でも関連性が明確化されていたけれど、この晩年の作品「深海の情景」にはポップ・アートのような雰囲気がある。これが1933年という戦争の足音が近づく時代に描かれているのは注目すべきことかもしれない。古賀春江の精神は時代とは徹底的にかけ離れていたのかもしれない。