『日本の近代美術』からのメモ

日本の近代美術 (岩波文庫)

日本の近代美術 (岩波文庫)

 本書がもともとは岩波新書で出たものを文庫で再刊したものだとは最近知った。出来れば図版をカラーにした形で改訂版があればいいと思うのだが、なかなか岩波はそういうのをやらない。まあ金のかかる話ではあるけれども。以下メモ。

いま、こころみに、明治維新前後(1868年前後)のフランスと日本の美術界を比較してみると、次のような興味ある美術交流を示している。このとき、フランスの美術界は日本の浮世絵版画を発見し、マネと印象派の画家たちは、そこに全く新しい造形のあることに狂喜しているが、他方、日本の美術界はヨーロッパ・ルネサンスの科学的な遠近法、もののまるみをつける明暗に驚嘆しているという、現在からは想像すらできない美術交流の落差を示していることである。(P13)

 日本の画家が西洋絵画を目にし、その遠近法や影によって丸みは立体表現が可能となるのを知ったのは、おそらく享保年間から田沼時代の頃で、平賀源内やその弟子であり秋田藩士であった小田野直武や司馬江漢等によって取り入れられたものだと推定されている。自分のこうした知識はほとんどみなもと太郎の大河漫画『風雲児』たちからの受け売りであるが、そのみなもとが本書を基礎知識のバックボーンとしていることが、なんとなく透けてみえる。

 また、杉田玄白が翻訳し、安永三年(1774年)に出版された『解体新書』の挿絵を原書の銅版画から木版にするために模写したのは秋田洋風画の小田野直武であり、杉田玄白と親しい平賀源内が弟子、小田野直武を推薦したと推定される。(P26)