懐かしい名前である。フランス映画音楽の巨匠、クロード・ルルーシュの相棒、そして「ダバダバダ」。
自分にとっては映画に好きになり始めた頃、もっと有名な映画音楽の作曲家という感じだったか。ムード・ミュージックぽいメロディアスな旋律、フランス映画の音楽といえばフランシス・レイかミシェル・ルグランかという感じで、ある意味二大巨匠的存在だった。正直にいうとかれこれ50年ずっとそんな感じである。
とはいえフランシス・レイとルグランでは様々な意味で相違がある。レイは作曲家、メロディ・メーカーであるが、ルグランは作曲だけでなくアレンジ、指揮、ピアノ奏者とマルチな総合芸術家という感じである。レイも元々はアコーディオン奏者だったといわれるが、音楽家としての格はルグランのほうが圧倒的に上なんだろうとは思う。
実際のところ、本当かどうかはわからないが、フランシス・レイは作曲家ながら譜面を読めない、書けないという話を聞いたことがある。しかしだからといってフランシス・レイのメロディ・メーカーとしての価値が下がるかというと、それは違うということになる。それは彼が作ってきた曲がすべてを教えてくれる。彼は天才的なメロディ・メーカーだったと思う。
おそらく彼の作曲法は、アコーディオンを弾きながら口ずさむといった風だったのではと想像する。それを誰かに写譜させるか、テープに録音するみたいなことだったのではないか。それでいてあの優雅で美しい調べが繰り出されるのだ。
1966年の「男と女」、1968年の「白い恋人たち」、1969年の「雨の訪問者」、1970年の「ある愛の詩」と怒涛のごとく繰り出される名曲の数々だ。作品をみると、ルルーシュだけでなくルネ・クレマン監督作品にも参加しているのがわかる。
サントラ盤のジャケットを見るにつけ、彼の美しい調べが聴こえてくるような気がする。映画もまたすべて美しい作品ばかりだった。
あえてフランシス・レイで1曲選ぶとすれば、まあ普通には「シャバダバダ」だとは思うが、大好きな俳優ジャンルイ・トランティニャン的にはこっちの方が良かったかなと思ったりもする。
Francis Lai - Le Voyou [Le Voyou original soundtrack]