近代美術館(MOMAT)へ行く

 都内で会議の後、飲み会を振り切って竹橋の近代美術館へ行く。多分、今年最後になるのかとも思う。手帳をくくってみると今年はこれで7回目になる。これが多いのか少ないのかはわからないが、月1の定例会議の後、神保町から歩いて10分程度のところにあるので、比較的通い安いということもあるのだろうか。
 ここはもともとは1969年に開館し、2002年に増築したということだ。20代の後半から30代にかけての一時期、神保町の会社に勤めていたこともあったのだが、その頃は絵を観るような余裕は全然なかったし、毎日9時過ぎまで仕事をしていたような状況だったから、とても会社の帰りに絵画鑑賞なんてことはできなかったかなと思う。
 ここの収蔵作品は半端ないくらいに多いので、常設展示も2〜3ヶ月ごとに変わる。なので毎回新しい発見というか、素晴らしい作品に出会うことができる。そのへんがこの美術館の魅力なんだとと思う。
 今回も新しく観ることができた作品をいくつか。
下村観山「唐茄子畑」。月並な感想だが右隻、左隻の縦横の対比が凄いと思った。

 フェルナン・レジェ「女と花」。

 フェルナン・レジェも収蔵しているのかとちょっとした驚き。キュビスムから抽象画へと移行した画家として著名な人でもあるが、割と好きな画家でもある。ちょっと形容し難い独特な雰囲気がある。

中村不折「廊然無聖」。

 この絵もずっと観たかったもの。たしかMOMATの図録で観て凄い絵だなと思っていたもの。中村不折漱石の『吾輩は猫である』の挿絵でも有名だが、もともとはフランス留学時には黒田清輝と同じくラファエル・コランに師事していたという。日本洋画の創成期に活躍したパイオニアの一人といえるのだろう。この絵もまたその時代の洋画と同様、ある意味習作なのだろう。西洋絵画のうちでも、写実主義に近い。ドイツに留学した原田直次郎と同じような雰囲気を持っているし、ある意味、黒田清輝と近しいものも感じる。
 明治期の洋画の開拓者たちは、西洋絵画を模写し、それにインスパイアされる形で表現を確立していったのだろう。それが容易に想像できるような作品でもある。MOMATにはこの人の作品では、「海岸の三人娘」も収蔵されている。観ることができるかどうかは、蓋然性によるんだろうが、いつか観ることができればいいなと思う。
 常設展とは別に一階では企画展として熊谷守一展をやっていた。閉館間際にざっと観ただけなのであまり感想めいたことは書けそうにない。長命で様々に画風が変化した画家であるようで、チャンスがあればもう一度ゆっくり時間をかけて観たいものだと思う。