「ソロモンの偽証」前後編

ソロモンの偽証 前篇・事件

ソロモンの偽証 前篇・事件

  • 発売日: 2015/08/05
  • メディア: Prime Video
 
ソロモンの偽証 後篇・裁判

ソロモンの偽証 後篇・裁判

  • 発売日: 2015/08/05
  • メディア: Prime Video
 宮部みゆきの一大長編小説の映画化。文庫本で全6巻となるこの小説を前編、後編の二本立てにした映画。正直、相当にしんどい映画でもある。脇を固める大人の演技陣は見事なのだが、しょせん物語の中心となるのは中学生の子ども達である。いわば壮大な中二病群像劇である。これは正直きつい。子ども達を使って効果的な物語を作るのは、時間や場所を制限されたある種凝縮された生の一瞬みたいな部分ではないかと思う。このような長尺で子ども劇をやらされては観ている側としては、いろいろ粗が見えてくる。しょせん演技のできない子ども達の学芸会である。
 という訳で比較的小説、映画とも評価の高いらしいのだが、あまり評価は出来なかった。いじめと子どもの心に巣食う闇の部分を見事に描いたという意味では、宮部の才能をどうのいうことはないとは思う。これはまさしく叙述によって成立する物語、小説であることが前提だと思う。
 前編、子どもを中心とした長尺の映画はやはり難しい。子ども達に完璧な演技を求めるのは酷であるし、芸達者な者や演技に天賦の才能を持つ者もいるにしろ、そうしたタレント数十人も集めてくるのはまず難しいだろう。子ども達は生きることにも稚拙なのである。それが子ども達だ。そうした子ども達の稚拙さをうまく切り取ってこそ、子ども達をメインに据えたドラマは成立する。この長大な尺では難しい。案の定、後編の模擬裁判はまさしく模擬裁判、学芸会と堕している。学芸会をスクリーンで延々と見せられても正直困る。そういうものなのだ。
 出演者の中では主役の藤野涼子はやはり素晴らしい才能だと思う。蒼井優を思わせるような凛とした個性的な佇まいは将来どんな女優になるだろうと想像させる。本当に楽しみである。ただし14歳にしてこんな演技、代表作を作ってしまっただけに、これから大変だろうなと思う部分もある。まして彼女の芸名はこの映画の主人公の名前をそのままとっている。これって失敗なのではないかと思う部分もある。
 彼女は今後、このデビュー作を背負ってキャリアを築いていかなくてはならない。ましてその芸名は常にデビュー作を想起させる。随分と罪作りなことをしてしまったもんだと思ったりもする。とはいえ彼女がその天賦の才能をこれからのキャリアによってさらなる高みで開花させたとすれば、これからの彼女が演じるであろう作品によって、デビュー作のイメージを消し去る可能性もあるかもしれないと思う部分もある。まあ今後が楽しみな女優さんだ。