解散総選挙

 予定どおり衆議院の解散の閣議決定の後本会議で決まった。選挙は10月10日公示、10月22日投票ということになった。
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6255583
 安倍晋三の思いつきと森友学園問題、加計学園問題の追求から逃れるためだけの解散は、野党第一党民進党の混迷や準備不足の中、絶妙なタイミングと称せられた。しかし安倍の解散を名言した記者会見のその日に小池百合子都知事が新党の立ち上げをぶつけてきたことにより、様相は激減した。小池の新党、希望の党には主に民進党を離党した細野や松原、自民党を離党して早々に小池の元に馳せ参じていた若狭、さらにみんなの党から維新に移っていた渡辺喜美などが加わり、さながら選挙互助会めいた感じだった。おそら小池の意味不明な人気を元にそこそこの議席を獲得するだろう新たな保守政党が誕生したと、そんなイメージでいた。
 そこに昨日からとんでもない話がネットを中心に飛び交い始めた。民進党の新代表前原誠司が、小池と会談をもち、民進党からは公認候補を一切出さず、原則すべての議員を希望の党から出馬させるというのである。それは民進党の身売りであり、希望の党への合流、いや吸収に近いものとなる。そこから様々な噂、未確定情報が流れる。小池百合子はというとすべての民進党議員を受け入れる訳ではなく、憲法改正や安保法制に賛成の保守議員に限りという形での選別を図るということを言い出し始める。
 そして今日になって民進党は議員総会を開き、前原が提案した希望の党への合流を大筋で認めたということだ。
民進党が “希望の党“に合流 「名を捨てて実を取る」 前原誠司代表の提案を了承【UPDATE】 | ハフポスト
小池百合子氏「民進党と"合流"という考え方は持っていない」 | ハフポスト
 そしてこの希望の党への民進の合流にさらにジリ貧自由党小沢一郎も参加する方向で検討が行われているという。
http://sp.yomiuri.co.jp/election/shugiin/2017/news1/20170928-OYT1T50058.html
 それまで安倍一強であった政治状況が一気に保守の二大政党による政権交代の可能性すらあるような状況に激変してしまった。安倍が解散を言い出した後での世論調査では安倍自民党の支持率は急落し、それに変わるように無党派層を中心に小池新党への支持率が高まっている。
 しかしあまりにも無節操な合流劇だ。民進党には地方の組織や地方議員もいる。それらに計ることもなく小池新党への合流が決まった。小池百合子はもともと自民党である。ただし彼女ほど政党遍歴が多彩な政治家も少ない。これまで彼女が辿った政党は、日本新党新進党自由党、保守党、自由民主党の五つ。今回立ち上げた希望の党で六つ目という有様だ。
 さらにいえば彼女は保守政治家の中でもどちらかといえば、バリバリのタカ派である。改憲論者、核武装論者でもある。ただし口当たりのいい物言いと横文字を多様するスローガンで相手を煙に巻くが、実は御都合主義で、芯の通った政治ポリシーを持った政治家ではないか。状況によってはどうにでも意見、立場を変える。それがそのまま政党遍歴に表れていると思う。
 昨年の都知事選でイメージ選挙で大勝し、さらに今夏の都議会選挙でも都民ファーストなる地域政党を立ち上げ、これも雰囲気だけで実態何もない状況で大勝した。この勢いそのままに今度は国政に打って出たという訳だ。多分、いずれ訪れる賞味期限切れの前に打って出ようということだ。
 そもそも都議会選挙の時にも都民ファーストは組織も金もない状態だった。それを公明党との選挙協力によって乗り切り大勝したのである。今回立ち上げた希望の党も、自らが代表となって看板は用意した。しかし全国で候補者を擁立するだけの資金もなければ、組織もない状況だ。実際、彼女が希望の党を立ち上げた時に、一体誰がスポンサーになっているんだろうと思ったくらいである。
 それを考えると、今回の民進党を潰して、議員を受け入れるという戦術はある意味頷ける。民進党には政党助成金としておよそ100億円とも言われる資金がある。さらに地方にも組織があり全国で選挙を行える。さらにいえば民進党のスポンサーでもある連合も今回の希望、民進の合流には支持を表明し、前のめりになっている。これで希望という新しい看板の元で、民進というほとんど死に体だった政党も生き返るかもしれないのだ。
 その出自からしてゴリゴリの保守政治家、タカ派小池百合子は一体何を考えている。昨年の都知事選以来、自分はある意味政局の一方の主役になりつつある。東京都での支持率も高い。今、国政に打って出ればかなりの支持を集めることが可能だ。そう今が売り時なのである。元々、権力志向は高く、女性初の総理を目指していたはずだ。今、彼女は65歳、順調に都知事をこなし、3年後の東京オリンピックを迎えた後に国政を目指していては確実に遅すぎる。その時まで自分に国民的な人気があるとは考えられない。
 元々、都知事選に打って出るまでは、自民党内での序列は下の方で傍流にいた。安倍一強の元では首相候補となるのは夢の夢という状況だった。それが都知事選で改革、刷新を売り物にして一躍高い支持率を獲得したのである。こうなれば都知事を踏み台にしてもう一度国政へというのが、彼女のモチベーションになっていると想像するのは簡単だ。
 政治的機会論者である小池にとっては、自らの国民的人気があるうちに一挙に打って出る一世一代のチャンス到来なのだ。そのためには自らを看板、広告塔として、資金や組織は民進と連合に担わせる。もし自民党と拮抗する選挙結果になれば、自民党の一部と手を結んでもいい、公明党も政権から離れるくらいなら簡単にすり寄ってくるだろう。場合によっては民進党系を切り捨てて、自民との大連立をしてもいい。すべては自分の賞味期限がある今、今なのだということかもしれない。
 これは安倍一強の政権を倒すという意味では意義があるかもしれない。しかし、そこには民主的なプロセスは一切ない。護憲リベラルはほとんど死んだも同じような状態なのである。もはや護憲リベラルの受け皿は、ここ数十年変わらない共産党一択という状況になりつつある。
 安倍一強を引きずり倒すために、あるいは原発推進という政策にストップをかけるために、目的のために手段を選ばず、小池新党に身を寄せて、議員としての身分を確保し、政策実現のチャンスを待つ、そんな冷徹な判断をしてる民進党のリベラル派がいるんだろうか。
 とりあえず自分はというと、もう政治的な物事には目を閉ざしていくかもしれない。老い先短い人間にとって、この政治状況は辛すぎる。アイロニカルに言えば、希望の党の出現によって希望は失せてしまったかのようだ。とりあえず目前の選挙には多分、共産党に入れるしか選択肢はないとは思う。まあどんな状況でも棄権だけはすまいと思うけど。