まさかのUターン

 日帰りでカミさんの実家のある長野まで行ってきた。正月以来ほとんど行っていないし、まあお盆に帰っていないので、墓参りを兼ねてということで。台風一過の三連休最終日、さすがに行楽に行く車も少なく、長野までは2時間足らずで着く。最初にカミさんの弟夫婦と昼食を。お子さんは小学三年生になっている。子どもの成長は早い。と同時にそれだけ大人も歳を重ねているということでもある。
 昼食後に実家へ。カミさんの母親はもう80になるというが、歳の割には元気そうだ。とはいえ高血圧、足も弱っているとかで、よく転び、顔を擦りむいているとも。とにかく注意してくれるように頼む。年寄りが転ぶと大腿骨を骨折することが多い。30年近く前だが、一緒に住んでいた祖母も転んで大腿骨を骨折した。年を経て二回、左右の大腿骨を骨折した。その都度骨を金具で繋ぐ手術をした。一回めの時はリハビリで歩けるようになったが、二回めの時は手術したが結局寝たきりになった。
 年寄りには大変多い骨折なので経験則を含め、とにかく注意してもらいたいと思った。
 墓参りの後、少し近況を話し合ってから帰ることにした。早めに帰りたいと思ったのだが、カミさんが志賀高原を超えて行きたいと言う。まあ帰省というより遠出、ドライブの感覚なんだろう。まあ体が不自由で自由にどこかへ行くということもなかなか出来ないだろうし、できるだけこういう時は希望に沿って動く。
 志賀高原超えはカミさんの実家に行く時には時々余裕があると通る。渋峠を超え、白根山の周囲を通り草津へ抜ける。ロングワイディングロードというやつだ。道路が空いていると景色も良いし、なかなかのドライブが楽しめる。今回は曇りでガスも出ていたので、景色の点では今ひとつだった。
 草津へ出て道の駅でトイレ休憩をし、長野原に出た。その後、145号ではなくあえて山道の国道406号を通る道を選択する。この道は最初に険しい山道を通るが、その後は割と真っ直ぐな道が続き、交通量も少ないのでけっこう気に入っている。ただし6時過ぎの暗い道は少々不安になることもある。長い道のりの間も対向車が数台、同じ方向ではほとんどひとり旅みたいな感じでずっと走りに走る。高崎には7時半少し前に着く。カミさんがスーパーに寄りたいというので、ベイシアを見つけて止める。車を降りようとするとカミさんが、スマホがないと言い出す。そして多分草津の道の駅のトイレに置いてきたと思うと言う。いつもズボンのポケットに入れているが、トイレで用をたす時には落とさないよう、スマホを棚とかに置くのだと言う。
 試しに電話をかけてみると確かに着信しているようである。草津の道の駅は寄った時もほとんど人がいない状態だったので、多分そのまま置かれている可能性は高い。しかしもう一度草津に戻るのかと思うと、ずっしりと疲労感が。ナビに道の駅を入れると到着は10時台という表示。来た道を引き返しあの真っ暗な山道を通れば、相当に時間を稼ぐことが出来そうだが、この時間帯から山道を行く根性はない。
 ナビの通りに進むと大戸の分岐で406ではなく145号に出るルートを行くように案内される。ナビもあの険しい山道は選択しないようだ。多分距離的には圧倒的に早いが、山道という要素からナビ的には却下なのだろう。
 道は空いていたのでどんどんと時間は短縮されて行き、結局草津の道の駅に着いたのは9時を少し前。トイレのすぐ近くに車を止めて、電話をかけてみると女子トイレの一室から着信音が鳴っているのがわかる。誰も入っていないのを確かめてからトイレに入って、スマホをゲット。カミさんも道中、緊張しているのか寝ることもなかったし、見つかった時には本当にホッとした様子だった。
 普段だとけっこう怒ったりすることもあるのだが、さすがに今回は怒る気にもなれず、「あって良かったね」とだけ言ってスマホを渡した。
 これまでにもトイレの中にスマホや身障者手帳を置き忘れたことは何度もある。そのたびに取りに行くのだが、さすがにここまで遠くに取りに来たことはない。脳梗塞の障害で注意障害があるので、一つのことに注意が向くとその前のことを忘れてしまう。なのでトイレとかで物を置いた場合、トイレで用をたすと、物を置いたことが失念する。病気なのだからと、わかっていて、もう少し注意喚起してくれてもと思ったりもする。
 まあ家族が、自分が気をつけてサポートしてあげなくてはいけないのだとは思う。それにしても高崎から草津へのUターンは正直しんどかった。