Journey to the One

JOURNEY TO THE ONE

JOURNEY TO THE ONE

 注文したCDがアマゾンから届いた。ファラオ・サンダースである。
 ファラオといえばコルトレーンのフォロワーという認識していた。そしてコルトレーン以後のフリージャズの旗手でもあった。いわゆる「ズキュ、ギョエー」によるトリップだ。そんな中、彼のナンバーがクラブ・シーンでリミックスされてヒットしているという話を聞き、実際にそれを聴いたこともある。リミックスあるいは音源としてDjが使用したものだ。それがこの曲「You've Got to Have Freedom」であり、これが収録されているアルバムがこの「Jouney to the one」である。
 1979年録音、翌年80年の発売されたアルバムである。一聴、企画モノっぽい印象もあるが、リリシズムとフリー奏法の融合みたいな感じである。特にピアノのジョン・ヒックスのリリカルで理知的な硬質のピアノが白眉を成している。様々な曲、演奏は当時のメイン・ストリーム・ジャズそのものであるが、中には日本的な琴の演奏を取り入れたものもあり、ある種のエキゾチズム的異化効果をもたらしている。
 そして例の「You've Got to Have Freedom」はキャッチーな親しみやすいメロディラインと思い切り泥臭いファラオの絶叫テナー、それにかぶる凡庸な女性コーラス。さらにそこに美しいエディ・ヘンダーソンのフリューゲル・ホルンがかぶさっていく。70年代以前であれば、これはジャズとは言い難いものだったかもしれない。意地の悪いハード・バップファンからすれば、これは歌謡曲だよということになるかもしれない。多分、私もそう思ったかもしれない。しかし80年代のジャズである、しかも聴いているのは世紀をまたいだ21世紀である。これは間違いなく秀逸なジャズであると思う。美しいバックと思い切り俗っぽい、それこそ場末のキャバレーにいるような女性コーラス、そこに絶叫鳴きのファラオである。これは傑作として記憶されていい一枚だと思う。
 ジャズを聴きたい初心者に薦める一枚はいつもいつも「サムシングエルス」や「サキコロ」である必要はあるまい。若い子にジャズをというときはこのへんからというのもいいかもしれない。すでにそうした地位を獲得した一枚かもしれない。