諏訪湖に行ってきた〜ハーモ美術館

 土日の二日、諏訪湖へ行ってきた。
 お目当てはもちろん、これ諏訪湖

 いやいや、そうではなくてこっち。諏訪湖畔にあるハーモ美術館。

ハーモ美術館

ハーモ美術館は、産業用ロボットのメーカー創業者、濱富夫とディレクター関たか子によって1990年4月26日に開館し、1997年12月18日に財団法人の認可を受けました。
アンリ・ルソーによって代表される、純粋な視点から自由な感受性を表現したパントル・ナイーフ(素朴派)を常設展示し、個性的なコンセプトを持った美術館として世界でも注目されています。
貴重なコレクションは当財団と(株)ハーモ、(株)日本ピスコを代表とする企業グループが地域への文化的貢献を目的として収集した400点の名画の中から紹介しています。

 ただでさえ少ないアンリ・ルソーの作品を8点も収蔵しているという。もうそれだけでこれは行かなくてという感じである。
 もともとこの美術館を知ったのは、1月に行ったMOMASでの「旅と芸術」展である。ここでアンリ・ルソーの「マルヌ河畔」を観て、これがハーモ美術館所蔵ということですぐに調べると、素朴派の絵画を多く収蔵する美術館だという。諏訪であれば日帰りでも行けない距離ではないと思い、近いうちにと思っていた。それで今回、宿を取って出かけてみることにした。こんな風に名画の繋がりで美術館巡りを続けるというのは、我ながら良い趣味だとは思ったりもする。
<マルヌ河畔>

 この美術館に来て改めて素朴派の定義のようなものを再認識する。
 素朴派=パントル・ナイーフとは、「特別な美術教育を受けず、純粋な視点から自由な感受性を表現した画家たち」のことである。今風にいえば「ヘタウマ」ということになるのだろうか。その代表選手はもちろんアンリ・ルソーだ。その他、この美術館に所蔵されているのはカミーユ・ボンボワ、アンドレ・ボーシャン、グランマ・モーゼスといった画家達で、いずれも正規の美術教育を受けることなく、独学で絵を描いてきた。彼らみな中年、あるいは老年になるまで別の職業を持ち、仕事の合間に絵を描き続けてきた人々である。いわば日曜画家たちである。正規の教育を得ていないだけに、構図が狂っていたり、遠近法もゆがんでいる。彼らはそんなことを気にすることもなく、彼らが観て、感じたままをキャンバスに描いている。それが素朴派といわれる所以なのだろう。
 その中でも驚かされたのがグランマ・モーゼスである。アメリカ東部の農家の主婦であった彼女が、絵筆をもってキャンバスに向かったのはなんと75歳になってから。町のドラッグストアに飾ってあった彼女の絵を、画商が偶然目にしたことから、彼女は一躍農民画家としてクローズアップされ人気をはくすることになる。それから彼女はなんと101歳までの画家としてのキャリアをまっとうする。彼女の素朴で楽しい絵柄は、アメリカ国民の情感に訴えたのだろう。彼女は晩年、国民画家とまでいわれ、ハリー・トルーマンからも賞賛を受ける。

 
 なんとも楽しい絵ではあるが、ちょっと間違えば小学生の絵でもある。素朴派の絵というのはそういう素人画と芸術のぎりぎりの境目にあるような範疇なのかもしれない。このタッチの絵をどこかで観た覚えがあるなと記憶をたどると、確か損保ジャパン日本興亜美術館で何枚か観たことがあった。
 カミーユ・ボンボワは初めて知った画家だが、なかなか味わいのある絵である。さらにアンドレ・ボーシャンは上野西洋美術館で一枚観ている。「アルクマールの運河、オランダ」だったか。
 とにかくこの小さな美術館、ハーモ美術館は、鑑賞にはちょうど良い大きさ、収蔵点数で、とても居心地のいい美術館だった。多分これからも何度も訪れることになるだろうし、諏訪というか長野を訪れる楽しみが増えたような気がする。
 そして今回一番気に入ったのはやっぱりアンリ・ルソーのこの一枚。暗い緑がの色調が、この人が単なる素朴派、ヘタウマ派ではなく、幻想絵画ともいうべき象徴性を獲得していると感じさせる絵だ。