国立近代美術館再訪

都内での会議を早々に終わらせ、時間があったので近代美術館(MOMAT)へ行ってきた。

 
 日本のシュールリアリズムの先駆者といえる古賀春江の「海」。一見するとマグリットのようでもあるが、時代的には古賀のほうが少し早いかもしれない。いずれにしても不可解かつキャッチャーな絵である。古賀の絵とかを観ていると、日本の洋画は大正末期から昭和初期になって、ようやく模倣からオリジナリティを獲得し始めたのではと思えてしまう。

 
 安井曾太郎安倍能成像」。今となっては安倍能成を知るものも少ないだろう。東大漱石門下の秀才にして、学習院の学長、戦前日本の知識人、リベラリストの代表みたいな人物にして、岩波茂雄の盟友だった人物である。戦後は確か吉田茂内閣で文部大臣をやったのではないだろうか。頑固な人物だったと聞くが、そうした人柄がよく画面に出ていると思う。
 
 伊原宇三郎「室内群像」。ある時代のピカソの影響が大だと思う作品だ。

 
 佐伯祐三「ガス灯と広告」、これはユトリロの影響下にあるかな。

 小倉遊亀「浴女その一」。浴槽のタイルの歪みの面白さ。白を基調とした美しさ。日本画あなどれん。明治以後、洋画の影響を得て新しく視野を、表現方法を拡大していったのは実は日本画なのかなと思わせる絵である。構図の取り方、得てして徹底的に2次元、平面的な表現であった日本画が、奥行きや立体的表現、陰影表現を2次元的うまく消化し、独特な表現を獲得したようにも思えた。まあ考えすぎかもしれないけど。