原田直次郎展


 
 まったくの予備知識なし。前回、埼玉県立近代美術館へ行った時に予告ポスターを見て、「靴屋の親父」という代表作の力ある絵に尋常ならざるものを感じてぜひ行ってみたいと思っていた。

原田 直次郎(はらだ なおじろう、1863年10月12日(文久3年8月30日) - 1899年(明治32年)12月26日)は、洋画家。父は兵学者の原田一道、兄は地質学者の原田豊吉。〜森鴎外の小説『うたかたの記』の主人公、巨勢のモデルでもある。

1884年、21歳でドイツに渡り、兄豊吉の友人画家ガブリエル・マックスに師事し、ミュンヘン・アカデミー(美術学校)に聴講生として登録。私費留学中は、ドイツ官学派(アカデミズム)の手厚い写実を身につけると同時にドイツ浪漫主義派の作風に影響を受け、世紀末趣味にも強い関心を示した
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 明治期に洋画を始めたフロントランナーの一人。黒田清輝とほぼ同時期に洋画を始め、黒田のフランスに対して、原田はドイツへ渡り洋画を習ったという。美術史の専門家の間では黒田と原田はよく比較されることが多いとも聞く。もっとも日本でも成功し、官製サロンを主催するなど日本洋画界の草分け、第一人者となった黒田に対して、36歳で亡くなった原田は忘れられた洋画家の一人だったという。

 この一枚である。写実の中にも強い精神を投射するような知から強い画力あふれる絵である。一介の靴職人の人生をこれでもかと画面に現す絵である。おそらくこの一枚を描くことによって原田直次郎という存在は永遠性を獲得したのかもしれない。
 この作品はドイツ留学中の22〜23歳頃に描いたという。早熟な秀才だったのだろうと思う。写実、一見ミレーの筆致にも似たような印象も受ける。ただし時代の限界かもしれんが、原田直次郎のこの絵も模倣の域を脱していない。まだオリジナリティがどうのというものではない。このへんは黒田清輝とかにも言えるかもしれんが。明治は西洋の模倣の時代だったということか。