私が惚れて買った絵


Twitterより
笠間日動美術館のショップで見た『私が惚れて買った絵』を古書店で格安でゲット。ポーラ美術館とかで観た名画の数々がこの画商が購入したものであることに驚きを覚えた。画商という仕事とは「文化の橋渡し」であると再認識。

 著者は日動美術館の二代目社長長谷川徳七。この著名な画商が還暦を前にして画商生活三十五年を回顧して、自身が惚れこんで買った絵画、彫刻八十点についての思い出を書き留めたのが本書である。
 「はじめに」の中で著者はこう述べている。

 私は惚れないと絵を買わない。売れるアテがなくても惚れると買ってしまう。画商としてはちょっと問題ありかと思うのだが、図らずも、そうして買い求めた作品の数々がが世界の美術界から高い評価を得ることになった。更にいえば、いくら惚れて買ったとは言え理解し協力してくださるコレクターに恵まれなければ、ただの道楽にすぎない。
 人類の財産である世界の名作をたくさん日本に輸入できたこと、これはもう画商冥利に尽きるもので関係各社に心から感謝を申し上げたい。

 ページをめくるとこれまで自分が観てきた名画の多くが、この画商の手によって国内に輸入されたものであることがわかった。それはある種の感動でさえあった。
 セザンヌ「四人の浴婦」「アルルカン」、モネ「サン=ラザール駅からの線路」、「ルーアン大聖堂」、「睡蓮」、ルノワール「レースの帽子を被った少女」、ゴーギャン「異国のイヴ」、ゴッホ「ヴィグィレ運河にかかるグレーズ橋、アルル付近」、「あざみの花」、スーラ「グランカンの干潮」、マティスリュート」、ピカソ「母子像」。
 それらは記憶が正しければすべてポーラ美術館で何度も観た名画たちだ。なにかそれだけで長谷川氏の審美眼に驚かされる。こういう画商の力があってこそ、国内にいて名画が鑑賞できるということになにか感謝しなくてはいけないのではと思ったりもする。そういう驚きの本だった。
 ただし日動美術館のショップで見た時には、本体4500円という価格に正直躊躇してしまい、通常の図録のみを買ってきた。しかし日動出版という自社出版のため、おそらくあまり流通していないことを思うと、買ってくれば良かったと少し後悔の念もあった。それがアマゾンのマーケットプレイス古書店による販売で1000円足らずで購入できたこと、送られてきた本の程度がすこぶる良かったことなどで、なんとなく幸せな気分になった。