埼玉県立近代美術館へ行く

 企画展「旅と芸術」


 旅、移動、異郷への誘い、エキゾチズムといった視点からの企画展。絵画とともに多数の19世紀の写真をミックスした異色の展覧会だ。
 この美術館に行くのは昨年の秋以来の二回目。今回の企画展では所蔵しているピサロやドニの絵も展示されるという。さらに他の美術館から寄託、借り受けたものでモネやルソー等の絵も見れるということで、まあ企画意図とかはどうであれ、そういう有名な絵が観れるという一点で楽しみにしていた。
 「旅と芸術」という企画展についていえば、緊密な構成度の高いものだ。「旅への誘い」、「「オリエントの誘惑」、「自然・観光・鉄道」、「世紀末のエグゾティスム」、「空想のたび・超現実の旅」、「旅行者の見た日本の自然」と6室に分かれている。それぞれに著名な絵画とともに当時の写真がふんだんに陳列されている。たいへん濃い内容で、正直全部もれなく観ているとぐったりするくらいに盛りだくさんな情報量でもある。絵画を感覚的に愉しむだけでなく、写真やテクストを含めて大量の情報を享受することになる。正直お腹いっぱいの気分になりました。
<カバネル「デスデモーナ」>

 カバネルといえば「ヴィーナスの誕生」で有名なアカデミーの巨匠。スベスベ感あるお気楽な絵。ちょっとポルノっぽいという印象があったりするのだが、この絵の尋常でない暗さ、美しさちょっと類を見ないような感じがする。耽美主義なんですねカバネルとでもいいたくなる。
ピサロ「エラニーの牛を追う娘」>

 印象派の王道をいくような美しい絵である。周囲に展示しているモネの絵する凌駕するような感じさえする。
アンリ・ルソー「マルヌ河畔」>

 美しい絵である。所蔵しているのは長野県諏訪にあるハーモ美術館。ここはアンリ・ルソーと素朴派の画家を中心にコレクションしているという。ぜひ行ってみたい美術館でもある。
ハーモ美術館
 ちなみにこの企画展の図録は平凡社から発売されている流通本である。普通、図録はその美術館だけで販売される非流通本なのだが市販されるというのは珍しい。A5版224ページで2300円は少し高いとも思うが、オールカラーなのでこれはいたし方ないところだ。それにしても平凡社はよくこの企画受けたなとも思ったりもする。全国で巡回される美術館ならともかく(そうなるのか)、埼玉だけとしたらこれは少し冒険だ。ミュージアムショップでの販売も見越してだとしても、この手の本が売れるかというと、ちょっと難しい気もする。まあ4000部も刷っていたら凄いとほめてあげたいところだ。

旅と芸術: 発見・驚異・夢想

旅と芸術: 発見・驚異・夢想