栗田諸々

ほぼ一日、栗田の処理のことで振り回される。
朝一番での対応は、とにかく確認がとれないということで、受注分含めて栗田への出荷はなし。システム的に諸々制限を加える。
午後になって、ある程度のスキームがわかるようになる。栗田からも今後の対応についての10数ページにわたる文書などもくる。この段階で仕入れを肩代わりする大阪屋への出荷等についての細かいデータ以降等も行う。が、午後遅くになってその手の諸々を従来通りにまかせるということになった。
ようは25日までの債権の凍結、26日以降は仕入れについては大阪屋が代行処理する。物流的には従来通りの出庫、栗田は書店への物流も従来通り行うということだった。ただし問題なのは25日までの債権、出版社が納めたものについては凍結される。26日以降納品分は大阪屋が支払いをする。とここまではいいのだが、25日以前に収めた分の返品については26日以降納品分と相殺するというのだ。
どこかの出版社の方も解説していたが、ようは25日時点で1000万の納品があった。通常、返品率40%とした場合、600万円分の代金が翌日なりに出版社に入ってくる。委託品は出版社によって取引条件が個々なので、翌日に7割近く入金になる出版社もあれば、6ヶ月後に精算というところもある。注文品は翌日に全額が基本だ。今回の再生スキームによれば、出版社に本来入ってくるはずの600万を栗田は債務として凍結する。そのうえで26日以降に納品したものについては大阪屋がきちんと支払うということだ。
しかし例えば26日以降に500万の納品をした場合、返品率40%を差し引いた300万が入金にならなければならないのだが、そこに25日以前の返品400万が返ってきた場合、差し引き100万を出版社は逆に栗田=大阪屋に支払わなければならなくなる。逆ザヤとか赤座といわれる奴だ。もちろん逆に支払うことはありえないので留保され、次の栗田からの支払い時に相殺されることになる。まあ私の理解もそんなところだった。
まあたいていの出版関係者は同じ感想を持つだろうとは思うのだが、これはモメルだろうなということだ。さらにいえば債権を一旦凍結された出版社が26日以降きちんと商品を出すかどうか、ここも微妙なところになるだろうとは思った。いくら大阪屋が仕入れを肩代わりするとしてもだ。
そもそも大阪屋自体がここ数年、かなり厳しい経営状況になってきている。アマゾンが主要帳合先を日販に変更したことや、ブックファーストが経営権をトーハンに売却したことにより帳合が移った。この二大ショックによりかなり状況は悪化した。社屋を売却し、楽天と大手出版社が経営に参加した。講談社小学館集英社カドカワといったところだと新文化の記事で読んだこともある。そして講談社出身の方が社長についたという。その時点で債務超過に陥っていたが、楽天と大手出版社の支援によりほぼ1年で債務超過から脱したとはつい最近の新文化の記事で読んだばかりだった。
そうした周辺状況からいろいろ総合すると、今回の倒産劇はどうも計画的というか用意周到なものだったようにも思う。来年にも大阪屋と栗田を統合するということもすでに発表されている。これは大阪屋とそのバックにいる楽天、大手出版社、さらに今回の栗田の再生期間中のスポンサーとして名前のあがっている出版共同流通(日販)によるある種の再編なのかもしれない。
しかし出版取次業にあって3位、4位連合となり大阪屋、栗田が統合してもなんらかのメリットがあるのか。そもそも大阪屋にそうした体力があるのかどうかという。現在はアマゾンに対抗すべく大阪屋に資本参加している楽天も、出版業界での成長性に見切りをつけたとすれば早期撤退もあるかもしれん。
本が出版物が売れない時代である。それもとんでもない勢いで失速している。この業界に勤めたのは大学を卒業してからだから、かれこれ35年になる。書店、取次、出版社と、とにかく本の物流の末端でずっと本に関わる仕事をしてきた。その最後にあたって、業界自体の衰退どころか、ほとんど死ぬ間際というのもなんとも哀しい。自分のリタイアとともにこの業界もまた壊滅的状況になるのかと思うとつらい。栗田出版の民事再生手続きの情報に接するに際してそんなことを考えている。