須藤薫さんの一周忌

存命中はきちんと聴いたことがなかったのに、亡くなってからはけっこうな頻度で聴くようになった。懐かしさとかそういうのでなく、正統な80年代ポップスを体現したヴォーカリストだと思う。歌手としての力量だけでいえば、たぶんユーミンよりもはるかにうまいだろう。エポと比べるとちょっとしんどいかもしれないけど、ある種のノリの良さとかではけっこう秀でていたのじゃないかとさえ思える。
とはいえ、サウンドクリエイターとして、あるいは詩作の才能としてもトータルな部分ではもちろんユーミンが群を抜いていたわけだし、たぶんユーミンと他のヴォーカリストは比べてはいけないんだろうとは思う。同じことはたぶん達郎とそれ以外の比較にもつながるのだろう。たぶんいろんな意味で、ユーミン、達郎、桑田、中島みゆきとかって、別格の存在なのかもしれないとも思う。もっとも後者二人を個人的にはそこまで評価しているわけでもなく、まあこのへんは本当好き嫌いの範疇かもしれない。
話を戻すけど、須藤薫と彼女を支えた杉真理サウンドクリエイトは21世紀にあっても、もっと評価されてもいいんじゃないかと思う。彼女の伸びやかなヴォーカル、キラキラとした杉の曲調とアレンジ、多彩なコラースなどなど。なんでこの人たちの音楽は一時期の打ち上げ花火みたいな形で収束しちゃったんだろう。
などと最近買い集めたCDやらYoutubeの動画などを見ているのだが、そういえば須藤さんが亡くなられて1年が過ぎようとしているのである。月並みだが月日は経つことの早いことといったら。でも、ITやら電子デバイスの進歩によって、過去の音楽を共時的に享受することができる。なんとなればYoutubeでポップスターの旬な姿をいつでも見ることができる。ブライアン・イーノが語ったように、「音楽に歴史というものはないと思う。つまり、すべてが現在に属している。これはデジタル化がもたらした結果のひとつで、すべての人がすべてを所有できるようになった」ということを意味しているのかもしれない。
クラウド・コンピューティングにより個人的所有、パーソナル・アーカイブもそのうちにあんまり意味をなさなくなるかもしれない。まだ持ち続けている数100枚のCDもほとんどがiPodクラシックの中に収斂されてしまうのだし、それすらもクラウドに放り込むことになるかもしれない。
まあいい、今はただ80年代の歌姫の一人だった、マイフェヴァリット・シンガーの一人須藤薫の歌をとりあえず聴いていたいだけで。ここんとこずっと聴いているのはこのCD。

SUMMER HOLIDAY

SUMMER HOLIDAY

  • アーティスト:須藤薫
  • 発売日: 2013/05/22
  • メディア: CD
そしてその中でも一番好きな曲がこれ。