追憶の2013年〜ザ・タイガース


12月27日の東京ドームでのライブに行ってきた。古くからの友人がどうしても行きたいというので、例のチケット流通センターで入手した。この友人はポールのチケットをとってくれたので借りもある。しかしザ・タイガースである、GSである。自分にとってはある部分どうでもいいところでもあるが付き合いというものもある。さらにいえば、リード・ヴォーカルであるジュリーこと沢田研二にはそれなりの思い入れもある。
沢田研二は1948年生まれの65歳、まさしく団塊世代の人であるのだが、ある意味日本のポップ・ミュージックにあってはスーパー・スターといっていいだろう。ソロ時代の華やかな活躍、「勝手にしやがれ」「サムライ」「TOKIO」などのヒット曲、どれをとっても一時代を築き上げたポップ・シンガーだ。かって矢作俊彦はギャグとしてではあるが、ジョン・レノンの死に際して「我々にはまだ沢田研二がいる」言い放った。
さらにいえば、沢田研二は私にとって邦画ナンバーワンであり続ける「太陽を盗んだ男」の主演俳優でもある。団地で一人プルトニスムを精製し原爆を作り上げてしまう孤独な高校教師を見事に演じた。とにかく独特な男の色気を醸しだす稀代のスターである。
その彼が60歳の時に還暦コンサートとして2008年に「沢田研二 還暦記念コンサート 人間60年 ジュリー祭り」を開催しドームでライブを行った。全80曲を一人で歌い上げた。その映像をテレビで観たが、残念ながら往年の彼のかっこよさは微塵もなく、ブクブクと太った男がインディアンの羽かざりをまとい歌う姿は滑稽を通り越したもの悲しさを感じた。
ジュリーはもう少し節制して欲しいと正直に思った。首尾一貫してスタイルの変わらないミック・ジャガーを見習って欲しいと正直に思ったものだ。とはいえ60歳にして80曲を歌い上げるその姿にはある種の感動も覚えた。そう、それはまさしく人間ジュリーの生き様でもあった。その後も3.11をテーマにやんわりと脱原発のメッセージを取り込んだ自主制作ミニアルバムを出すなどポリシーある活動も続けている。
そういう意味で今回のザ・タイガースコンサートについて自分の興味はといえば、もうこれはただ一つジュリーの生き様を確認しにいくということだけだった。そしてそれだけを見れば、ジュリーはジュリーであり続けた。
ライブの様子については朝日夕刊で湯浅学がライブ評を寄稿している。的確にライブの有り様を過不足なく紹介している。記録で意味で全文引用する。

■評:ザ・タイガース かくも貴重な祝祭の場
 結成当時のオリジナルメンバー5人(加橋かつみ岸部一徳沢田研二瞳みのる森本太郎)が揃(そろ)ったザ・タイガースのステージを見た(12月27日、東京・水道橋の東京ドーム)。
 5人がサポートメンバー一切なしで歌い、演奏する。44年ぶりのことだ。グループサウンズ勢の中でもとりわけ人気のあったバンドだけに満場の観客(当時からのファンとおぼしき女性中心)は終始ほぼ総立ち状態。
 デイブ・クラーク・ファイブのヒットで知られる「ドゥ・ユー・ラブ・ミー」で勢いよく幕を開けた。前半12曲は、ビートルズローリング・ストーンズなど、すべて洋楽のカバーで盛り上げる。沢田のストーンズのナンバー、加橋のビー・ジーズのナンバーは心に残るが、瞳、森本、岸部がそれぞれソロボーカルをとったのは、このステージのテーマの一つが“友情”であることを強く印象づけた。
 この日は岸部四郎も登場。病身を押してビートルズの「イエスタデイ」を歌った。その時の四郎の兄、一徳のベースの柔和な音色は慈しみを感じさせるものだった。この曲に限らず、演奏面での岸部一徳の貢献ぶりはただならぬものを感じさせた。決してボトム低く太くパワフルというものではなく、メロディーを生かす軽快なプレーは多彩で、的確かつドライブ感もある。他に得難い魅力があった。
 第2部は「僕のマリー」「花の首飾り」などヒット曲、名曲が続々と披露された。しっとりとボルテージが上がる中、「君だけに愛を」「シーサイド・バウンド」で熱狂。「ラヴ・ラヴ・ラヴ」の大合唱に至った。
 ザ・タイガースとファンが、それぞれ生きてきた、そして今も生き続けている、という実感を分かち合えた何物にも代えられぬ貴重な祝祭の場だった。(湯浅学・音楽評論家)

岸部一徳のベースについてはまさしく同感である。彼があれほどのプレイを見せるとは正直思わなかった。そこそこのドライブ感、グルーヴ感がありザ・タイガースサウンドを底支えしているとは思った。
彼に対する思い入れなどさらさらないのだが、なぜか彼のMCを聞いている時に不覚にも目頭がジ〜ンとしてしまった。なぜなのかはわからない。
しかしそれでもあえて言えば、メンバー全員の劣化具合が半端ではない。平均年齢が65オーバーであるのだから致し方ないのだろうけど。MCでも言われていたが瞳みのるのみ昔の面影を彷彿とさせるものがあるにはあったが後はみな普通のジイサン達が無理やり若作りしているだけでしかない。我等がジュリーも還暦コンサート同様太った白髪、白髭のオッサンでしかない。でも歌声だけはやはりホンモノである。長く日本のショー・ビジネスでソロシンガーとしてフロント張ってきた、まさしくスーパースターがそこにはいた。
正直に言おう、今回のザ・タイガースのライブ、ジュリーがヴォーカルをとっている限りでは、まさしくザ・タイガースであり続けていた。しかしジュリー以外のメンバーがソロをとるととたんにサウンドはただのオヤジ・バンドに堕してしまう。いるでしょ、リタイアして余裕が出てきたからと昔とった杵づかよろしくバンドとか始めちゃうオッサンたち。そこそこ上手くてそれなりのグループサウンド奏でる連中。ようはあのレベルなのである。
これが小さなライブハウスでならまだしょうがないかなとも思うが、これをドームの巨大スペースで延々続けられるのだ。いくらノスタルジックなサングラスかけていてもこれは少し許容しがたい部分だと正直に感じた。つい一月前に彼らより5〜6歳年長のポール・マッカートニーが精力的で音楽的に完成度の高いパフォーマンスを見せてくれた場所である。ポールとザ・タイガースを比べるのはルール違反なんだろうが、やはり彼我の差を思わざるを得ないかなとも思う。まあはっきり好き好きと許容の問題かもしれないが。
観客席はほぼ8割がたが女性。しかもみな私なんかより4〜5歳年長のご夫人たち。でもなんとなく心はティーンエイジャーに戻っている感じで華やいでいらっしゃる。アリーナ席はほとんど最初から総立ち状態であったが、我々のいる1階席あたりでは立って踊っている方はごくごく少数。後半のヒット曲のあたりから立つ方も増えてきた。我々も後半の「君だけに愛を」「シーサイド・バウンド」で立って体を揺らし曲を口ずさんだ。小学生だったが基本同時代的にGSを享受してきた身である。
しかし心はティーンエイジャーのご夫人たちなんだが、どうでもいいけどその六割方がユニクロ系のセミロングのダウンを着てらっしゃるのがちょっと残念。とにかく多いのよユニクロ系ダウンがね。せっかくジュリーに、トッポに、ピーに、サリーに、タローに会いに来るんだからもう少し着飾ってくればいいのにと小さくつぶやいたりもしてみた。
ちなみに古い友人(同世代の女性)は、ジュリーに会うんだからこれしきゃないでしょと、ウン十年ぶりだかでミニ・スカート着てきた。ロングコート着てれば電車とかはスルーとか訳わからないこと言ってたけど。なんでも30年前の服のほとんどが着れるというのが彼女の自慢らしいのだが。
ライブ・セットは以下のサイトが詳しいので引用する。
http://thetigersfans.com/the-tigers/2013setlist/:TITLE

第一部
Do You Love Me
(I Can’t Get No) Satisfaction
Nowhere Man(ひとりぼっちのあいつ)
I Started A Joke(ジョーク)- Vo.トッポ
You’ve Got To Hide Your Love Away(悲しみはぶっとばせ)- Vo.ピー
Yellow River – Vo.タロー
Yesterday – Vo.シロー
Tell Me – Vo.サリー
Holiday – Vo.トッポ
I’m Henry VIII, I Am(ヘンリー8世君)- Vo.ピー
Time Is On My Side
Under My Thumb
第二部
十年ロマンス
僕のマリー
落葉の物語
生命のカンタータ
忘れかけた子守唄
廃虚の鳩 – Vo.トッポ
モナリザの微笑
銀河のロマンス
青い鳥
花の首飾り – Vo.トッポ
君だけに愛を
シーサイド・バウンド
I Understand
ラヴ・ラヴ・ラヴ
アンコール
タイガースのテーマ
美しき愛の掟
色つきの女でいてくれよ – Vo.トッポ

カバー曲ではビートルズストーンズの影響を受けたジュリー、サリー等主流派と一人ビージーズが好きなトッポみたいな選曲だったように思った。さらにいえばザ・タイガースはGSの中では比較的コーラスがしっかりしているグループだったことを今回のライブでも再認識した。ビートルズの「Nowhere Man」をきっちり歌い上げていたし、MCの中でも売れる以前大阪難波のライブハウスに出ている頃最も得意としていたと紹介されていた。
今回のライブ、ある意味一夜限りの同窓会みたいなものだとは思う。ジュリーがいなければ多分成立しなかったのかもと思う。ポールのときには感動に前のめりしていた自分もとりあえずザ・タイガースについては、そこそこ覚めた態度で2時間半い続けていたということ。
しかしこの手のライブの成功があるとGSグループの復活再結成ライブとかも続くかもしれないな。団塊リタイア系は金持っているから、そこそこの需要はありそうだしね。個人的にはスパイダースの再結成だったら行ってもいいかもとも思う。あそこは堺正章、井上順のキャラがたっているし、井上、大野、かまやつとサウンド系もきっちりしている。かまやつひろしも確か75歳くらいになるからやれるとしたら今年中かなという気もしないでもないな。