東電虚偽報告

この数日新聞紙面(といっても主に朝日)を賑わしている。東京電力の虚偽報告といっても、今さらという感もないでもないし、今度はなにというのが個人的な感想だ。正直、東電がなにをやらかしたとしても、すでに免疫というか食傷気味というか、もうどうでもいいような感覚がある。こんなことではいけないのだろうが、多くの国民が同じような感覚でいるのではないか。
簡単に理解したところでいえば、1号機の復水器の損傷を国会事故調査委が調べようとした。それに対して東電は1号機建屋は真っ暗で調査が困難であると答えた。しかし実際は真っ暗ではなかった。復水器が壊れているとすれば、それは地震によって原子炉に損傷があったことになる。それは東電が当初から主張していた原発地震による損傷はない。想定外の津波によって大きな被害を受け事故にいたったという主張が覆されることになる。事故に対するアプローチにとって重要な意味合いをもつ調査を東電は虚偽によって妨害したということになるわけだ。
とはいえこれまでの事故発表の中で嘘を嘘で塗り固めてきた東電のことである。まあ普通に東電だもの、くらいのところで片付けてしまいたくなるようなことでもあった。しかし明白な虚偽対応であっただけに、東電もHPで謝罪も出したし、そこそこに大きくマスコミ報道もされていた。昨日の北朝鮮による核実験報道が出るまではね。まああの報道以来、マスコミ報道はすべて北朝鮮報道一辺倒になっているし、東電はまたまた救われた感じがある。うがった見方というか、まあギャグの類ではあるが、北朝鮮の核開発のスポンサーは東電なんじゃないのと思いたくもなる。
とりあえず朝日の報道をメモ的にチェックする。

http://www.asahi.com/national/update/0207/TKY201302060574.html
東電、国会事故調にウソ 「原発内真っ暗」→調査断念
非常用復水器のある4階も、天井が壊れているため、自然光が差し込んで明るい。東電はこの映像はカバー設置前に撮影したものと説明していたが、実はカバー設置4日後の撮影だった=東電撮影の映像から

福島第一原発1号機の現状
 【木村英昭】東京電力が昨年2月、福島第一原発1号機の現地調査を決めた国会事故調査委員会に、原子炉が入る建物の内部は明かりが差し、照明も使えるのに、「真っ暗」と虚偽の説明をしていたことがわかった。国会事故調は重要機器の非常用復水器が、東電の主張と違って地震直後に壊れた可能性があるとして確かめるつもりだったが、この説明で調査を断念した。
 国会事故調は解散しているが、現地調査の責任者だった田中三彦元委員(元原子炉設計技術者)は東電の虚偽説明で調査を妨害されたとして7日にも、衆参両院議長に非常用復水器の調査実施を申し入れる方針。
 国会事故調は、2011年3月11日の地震発生直後に1号機原子炉建屋の4階で「出水があった」との目撃証言を複数の下請け会社の労働者から得た。
 4階には水の入った非常用復水器のタンク2基と配管があるため、地震の揺れで非常用復水器が壊れた可能性があるとして4階部分の調査を決めた。
 これに対して東電は、昨年2月28日午後7時ごろ、玉井俊光企画部部長(当時)らが衆議院第2別館を訪問。
 田中元委員らに、ところどころ明かりの差す4階の映像を見せながら、この映像の撮影時は、原子炉建屋に放射性物質の拡散を防ぐカバーをかける前だったので明るさがあると説明。そのうえで「今は真っ暗だ」「照明もついておりません」と話した。
 田中元委員は最終的にこの「今は真っ暗」を理由に調査を断念した。
 ところが、実際は、映像の撮影日はカバーをかけた4日後だった。カバーは太陽光を10〜16%通すので、物を搬入する穴があり、天井が爆発で破損している4階に明かりが差していた。さらにカバー内側の天井には強力な水銀灯が取り付けられ、11年10月28日から使用可能になっており真っ暗になり得ないのに真っ暗と虚偽の説明をした。
 東電広報部は説明に誤りがあったと認めたうえで、「何らかの意図を持って虚偽の報告をしたわけではない」と話している。
 非常用復水器は、電源を失っても、原子炉の蒸気を水に変え、重力を使って原子炉に戻すことで、炉の圧力を下げ、冷やす重要装置。地震の揺れで壊れていたとなれば耐震基準を強化する必要が出て、再稼働問題にも影響を及ぼす。

http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201302060852.html
東電、危険強調1時間 「真っ暗」「道に迷えば高線量地域」 国会事故調に虚偽説明
光を10〜16%通すカバーがかけられた福島第一原発1号機(手前)=2012年7月、本社ヘリから
 東京電力福島第一原発1号機の現地調査をめぐり、虚偽の説明をした相手は、国権の最高機関に設置された調査委員会。東電は「何らかの意図があったわけではない」と説明するが、中身は実質的には1時間9分にわたる調査断念に向けた説得作業だった。朝日新聞が独自に入手した音声記録で明らかになった。▼1面参照
 「道に迷えば恐ろしい高線量地域に出くわしちゃいます」
 「迷うと帰り道はわからなくなる」
 「精神的にもパニックに陥るみたいなことも含めて相当危険」
 東電の玉井俊光企画部部長(当時)は、国会事故調の現地調査の責任者である田中三彦委員(同)らに、真っ暗な状況から迫りくる危険を、繰り返し強調した。
 現地調査をするしないはあくまでも国会事故調が決める。事故調には、国会の両院合同協議会に対して国政調査権の行使を要請できるという、強い権限が与えられている。東電は調査に協力する立場だ。このため、東電は調査を拒否するような話はせず、「こんなむちゃなことは、おやめいただいた方がよろしいんじゃないでしょうか」と、自発的な取り下げを迫った。
 「線量計が重い」「がれきが散乱している」と暗さ以外の要因も持ち出した。
 田中元委員ら事故調のメンバーは、現地調査を2012年3月5日と6日に実施すると決めていた。だが、玉井企画部部長から同行を拒まれ、「今日、ご判断をしていただきたい」と迫られると、田中元委員は最後には「真っ暗だね。照明を持ち込むことはできないですよね」「あきらめました。残念です」と、1号機原子炉建屋の現地調査を断念することを告げた。
 ●非常用復水器、究明のカギ
 国会事故調が現地調査しようとした福島第一原発1号機の非常用復水器は、事故原因の解明作業で最も高い関心を集める設備だ。
 電源なしでも、蒸気を水に変え、重力を使って原子炉に注ぎ込み、炉の圧力を下げ、冷やせる重要装置だ。だが、地震発生後、早々と止まってしまい、早期の炉心損傷を招いたとされている。
 政府事故調はこの非常用復水器に関して「機能を損なうような重要な配管破断が生じたことをうかがわせる形跡は何も見当たらず、配管破断はなかったと考えるのが合理的であると思われる」との見解を示した。
 一方、国会事故調は、地震の揺れで非常用復水器が壊れた可能性もあると指摘。地震の揺れが重要機器を壊したか否かで両事故調は見方が割れている。
 もし国会事故調が言うように過酷事故時の原発冷却を担う非常用復水器が地震の揺れで壊れていたとなると、原発の耐震基準のさらなる厳格化が必要となり、原発の再稼働問題にも影響を及ぼす。
 どちらの主張が正しいか見極める機会が、東電の虚偽説明によって妨害されたことになる。(木村英昭)

朝日新聞デジタル:東電社長、組織的関与を否定 衆院予算委「真っ暗」巡り - ニュース特集
東電社長、組織的関与を否定 衆院予算委「真っ暗」巡り
衆院予算委で辻元清美氏の質問に答える東京電力の広瀬直己社長=12日午前11時2分、国会内、樫山晃生撮影
 【木村英昭】東京電力が、国会事故調査委員会に「真っ暗」と虚偽説明をして福島第一原発1号機の現地調査を妨げた問題で、東電の広瀬直己社長は12日の衆院予算委員会で、虚偽説明は対国会事故調の窓口担当者が間違った認識で上司に相談せずにおこなったと説明し、組織的関与を否定した。
 一方、広瀬社長は現地調査の要請があった場合、「最大限の協力をしていきたい」と述べ、調査の実現に協力すると表明した。
 広瀬社長は参考人として招致され、辻元清美氏(民主)から質問を受けた。
 国会事故調に虚偽説明をするに至った経緯について広瀬社長は、説明者の玉井俊光企画部部長(当時)を「原子力のある意味プロ」としたが、「中は暗いとの思い込みのもと説明した」と答え、意図はなかったとの従来の主張を述べた。
 玉井氏に対し、会社組織として誰がどのような指示を出していたかに関しては、「(玉井氏は)全く上司には説明していなかった」と答えた。
 しかし、現地調査をめぐる国会事故調への説明は「当然社長が関与すべき問題だ」との見解も示し、当時の東電首脳の対応を疑問視。当時の勝俣恒久会長や西沢俊夫社長も社内調査の対象にする考えを示した。社内調査には外部の専門家の検証も入れたいとも述べた。
 辻元氏は虚偽説明をした玉井氏を予算委に参考人招致するよう求める一方、独立性の高い第三者機関が調査すべきだと指摘した。
 予算委では原子力規制委員会の田中俊一委員長が、国会から要請があった場合「速やかに調査に取り組んでいきたい」との考えを明らかにした。
 国会事故調は、1号機4階で地震直後に出水があったとの目撃証言を受け、4階にある非常用復水器が地震の揺れで壊れた可能性があるとして、昨年2月までに現地調査を決めた。
 東電の玉井氏は昨年2月末、国会事故調の委員にところどころに明かりの差す4階の映像を見せ、この映像の撮影時は、原子炉建屋にカバーをかける前だったので明かりが差しているが、「今は真っ暗」「照明もついておりません」と説明。これを受け、国会事故調は現地調査を断念した。
 ところが実際は、映像の撮影日はカバーをかけた4日後で「今は真っ暗」は虚偽だった。そもそもカバーは自然光を10〜16%通し、カバー内側の天井には強力な水銀灯も取り付けられ、真っ暗になり得ない状態だった。

http://www.asahi.com/national/update/0212/TKY201302120209.html
釈明も虚偽、東電認める ホームページにおわび掲載
 【木村英昭】東京電力は11日夜、国会事故調査委員会に「真っ暗」と虚偽説明をして福島第一原発の現地調査を妨げた問題に対する釈明に虚偽の内容があったとして、自社のホームページに「おわび」を掲載した。

 東電は虚偽説明問題が発覚した7日、国会事故調側から明るさについて質問があったので説明したとして、「何らかの意図をもって虚偽の報告をしたことはない」と自社ホームページなどで釈明していた。

 だが、国会事故調側から質問があったというのも虚偽で、明るさをめぐる話は、実際は東電から切り出していた。

 東電は「確認した結果、当社側からご説明していることがわかった」として、おわびを載せた。ただ「何らかの意図をもって虚偽の報告をしたことはない」との主張は崩していない。

そんでもってこれが東電のお詫び

【130207】(訂正)平成25年2月7日付朝日新聞1、2面「東電、国会事故調に虚偽」について|TEPCOニュース|東京電力
月7日に掲載した当社見解につきまして、以下の通り訂正いたします。
(訂正)平成25年2月7日付朝日新聞1、2面「東電、国会事故調に虚偽」について
平成25年2月7日
東京電力株式会社

 国会事故調査委員会から当社に対して、福島第一原子力発電所の1号機原子炉建屋内を調査したい旨の申し入れがあり、当社から、建屋内は線量が非常に高く、ガレキの散乱や、床に穴が空いていて怪我や墜落の恐れがある等、非常に危険な状況であることをご説明しております(※)。
 その際、現場の明るさについて、「建屋カバー設置後の映像」を「建屋カバー設置前の映像」と誤認した上で、当社側から暗いとご説明したことは事実であり、大変申し訳ございません。
 ただし、何らかの意図をもって虚偽の報告をしたことはございません。
 1号機原子炉建屋内は、現在も危険な状況であることは変わらないものの、今後、現場調査の指示などがあれば、現場の状況を踏まえ真摯に対応してまいります。
※ご説明では、当社が行った同号機の調査時の映像をお示しいたしました。撮影時に現場に立ち入った当社社員は55分(建屋内は30分程度)で最大9.44mSvの被ばくをしております。
以 上
【参考】2011.10.18福島第一原子力発電所1号機非常用復水器を確認した時の映像(2011.10.21公開済み)
(お詫び)
平成25年2月7日に掲載した当社の見解の中で、「その中で、現場の明るさについてご質問があり」としておりましたが、その後、事実関係を確認した結果、当社側からご説明している事がわかりましたので、訂正させていただきました。大変申し訳ございませんでした。(平成25年2月11日)

しかし、「何らかの意図をもって虚偽の報告をしたことはございません」って、それで通るのだろうか。一部上場の大企業が甚大な事故を起こしてしまい、それに対して国会が事故調査委員会を作って、調査しようとしたその時に、ついうっかり勘違いして、間違ったことを申し上げてしまい、その結果として調査がスムーズにいきませんでしたと。で、ごめんなさいして、でも嘘つこうと思ってやったことじゃないので大目にみてくださいねと。国会の事故調査委は当然のごとく国民の血税によって動いているというのに、悪気があったやった嘘じゃないからごめんね、勘弁してよということなのである。
とりあえずね、勘違いして虚偽報告した部長さんとかは即刻懲戒免職にして。仕事でへたうったのだから、間違っても退職金をあげてもいけませんし、関連会社に天下りさせてもいけません。そして国会に参考人招致された現社長以下現経営陣もなんらかの処分が必要だし、虚偽報告当時の社長の西沢やら会長の勝俣クン(またこいつだよ!)にも事情聴取して処分するべき。事故を起こした大企業が、国から調査を受けているのに、たとえ百歩譲って勘違いだとしても虚偽報告したのである。ごめんではすまされない。実際、事故当時の経営陣はみんななんのお咎めなしに関連企業、団体に天下りしているのである。いい加減この手の無責任、放任を改めないといけないと思うのだが。