健康診断

11日は年に1度の健康診断。例によって眼底検査だの採血だの、腹部エコーだのバリウム飲んでの腹部レントゲンだのとお決まりの検査を行う。心電図やるときはお決まりの「ここで誰かが死んでんず」というしょうもないオヤジギャグかませてと。
いつも結果が出るまではなんというか、ドキドキ、ハラハラなんだが、今回はすでに検査時点でダメだし食らってしまった。血圧がね、けっこう高いのよ。下が90の上が150だって。問診を受けたお医者さんの話では、まあ朝が一番血圧が高いということもあるけど、この数値はすでに薬を常用して血圧下げなくちゃいけないレベルだとか。
血圧はずっと平均レベルできていたから、ちょっとビックリである。これまではだいたい下が60くらいで上が110とかそんな数値だった。でもここ2〜3年と少しずつ上がってきてはいたようにも思う。なんとなく自覚症状とかもあるにはあって、例えばひどい二日酔いの翌日とか、ジムで30分くらい走ったりした後とかに、妙に顔がほてって、いかにも血圧上がってますみたいな感覚もあったりもした。
これはなんつうか、やっぱり経年劣化というか、老化というか、まあそういうもろもろなんだろうな。四捨五入すれば還暦だもん、血圧だって高くなるだろう。さらにいえば、我が家の場合は家系とかもあるかもしれん。父親が晩年は高血圧症とかになっていて、医者通いしていても、一時、まあ本当に瞬間的な数値だったのだろうけど、300近い数値が出て、ほとんど入院一歩手前みたいなこともあったのを記憶している。
その父親は63の時にクモ膜下出血で死んだ。夜勤明けで帰宅して、風呂場で倒れたんだった。祖母が自宅にいたがほとんどパニック状態で、私の職場に電話してきて、私が救急車を呼んだ。その後、会社から電車を乗り継いで病院へ行くまでの気の遠くなるような時間とか、すでに25年くらい前のことだけど、けっこう鮮明に覚えていたりもする。
父は結局、一度も意識を取り戻すことなく倒れてから一昼夜であっけなく死んだ。飲ませると一日で一升くらい軽く飲めてしまうような大酒飲みの人だった。50前後からは高血圧症、糖尿病だの、ほとんど成人病のオンパレードみたいな感じだったが、それでも酒を飲み続けた。ある意味、命を縮めるような酒だったし、本人もある時、息子の私に「自分はアル中だ」と話してくれたこともあった。
私もまあ人よりは酒を飲むほうだが、それでも父親の域にはまるで達しない。それでもほぼ毎日かかさず飲んではいるから、じょじょにいろいろと体に赤信号が点滅するようになるのだろう。父の死んだ歳まであと7年くらいか。そのくらいだと、娘はようやっと学校を卒業するかしないかくらいの年齢だし、障害をもった妻の面倒をみていくということも考えれば、とうていそんなに簡単に逝ってしまうわけにはいかないのだろうとも思う。
とはいえ最近は妙に弱気になっている部分もある。夜寝るときなどは、このまま目を覚ますことなく逝ってしまえば、とりあえず仕事だの、それにまつわる人間関係だの、家庭にまつわる家事だの、介護だの、まあそうしたもろもろから抜け出すというか、解放されるんではないかみたいな、えらくネガティブな心根になってしまうときがないでもない。
わずかではあるが蓄えもあるにはある。死ねばいくばくかの保険とかもおりるだろうし、少なくとも借金の類もほとんどない。残された家族はいろいろたいへんだろうけど、けっして絶望的な状況でもないだろうし。仕事のほうはというと、こっちも多少はもろもろあるだろうが、それでもなんとか回っていくだろうと思う。私が死んでも、世界は回り続けていく。そんな歌があったようにも思う。
なんとも弱気な心根である。ヤキが回ったというやつですな。これも経年劣化、年というやつなのかも。そういえば、健康診断の2日前だから9日の月曜から今日までずっと酒を飲んでいない。これも弱気の産物なのかも。なんかこのまま酒をやめられそうな勢いである。少なくともアル中じゃなかったということが証明されてしまったのだろうかしらん。」