ロス・ロンリー・ボーイズ

Los Lonely Boys

Los Lonely Boys

BS朝日でやっているベストヒットUSAに出演したグループ。即興でヒット曲「HEAVEN」をアコースティックで演奏していたのがけっこう気に入って、ついアマゾンでポッチと購入クリックを押したのが今週届いてきた。
しかしベストヒットUSAがほぼ昔と同じスタイルでやっているのが嬉しい。この番組は80年代よ〜く見たものである。20代の半ばの頃であり、一番ポップ・ミュージクを聴いていた頃である。ホール&オーツマイケル・ジャクソン、エア・サプライ、ジャーニー、トト、プリンス、マドンナ、メン・アット・ワークブルース・スプリングスティーン、ヒューイ・ルイス&ニュース、J・ガイルス・バンド、シカゴ、カーズ、REOスピードワゴン、バングルスなどなど、ああ止め処ない。
それにしても小林克也は年をとったな。なんか痩せ方がすごい。大病でもされたのだろうか。トークにもキレがないし、けっこうかむ。1941年生まれだから71歳、まあこれは仕方がないことなんだろうな。聴いている、見ているこっちだってとんでもなく年齢を重ねてきてしまっているのだから。まあ優しい眼差しというか、生暖かく見守るしかないんだろうな。こういうアメリカナイズされたDJなんてなかなかいなかったんだしね。
そしてロス・ロンリー・ボーイズである。見るからにむくつけきメキシカンである。ベストヒットUSAの放送での印象は、ああこれはまあロス・ロボスの亜流みたいなやつかなと、まあそんなことを思った。ところが全然違った。アコースティックで演奏した「HEAVEN」はノリの良いコーラスで、フォークロック系である。そういうイメージで届いたデビューアルバムである本作を聴いてみると、どっこいどうしてどうしてきちんとロックしている。出自であるメキシコ、ラテンテイストを取り入れつつも、基調はサザーン・ロック伝統のアーシーなブルースにふっている感じだ。なかなかどうしてどうして骨太なブルース・ロックしている。
ウィキペディアで調べると出身はテキサス。所謂メキシコ系のアメリカ人=テハーダというやつで、音楽ファミリーに育った三人兄弟のグループである。
ロス・ロンリー・ボーイズ - Wikipedia
メインをはる長兄のリードギター、ヘンリー・ガルサのギターがいいね。クラプトンやジミヘンあたりのフレーズ聴かせてくれるかと思えば、あるときは同じメキシコ系の大先輩サンタナ風だったりもする。もう誰に影響を受けて、どういう音楽聴いてきたのかが丸分かりなのである。さらにベースの次兄ジョジョ、ドラムの末っ子リンゴのバッキングも悪くない。ドラムでリンゴというのが泣かせるな。この三人技術的にはかなりレベル高い。
届いたのはデビュー盤であり、ヒット曲である「HEAVEN」も収録されている。2003年の作品。すでにデビューして10年近いキャリアということになる。本作では三人の演奏にさらにバッキングとしてオルガンが参加。ギター、ベース、ドラム、オルガンというブルース・ロックの王道をいっている感じだ。1曲目のリフの効いた「SENORITA」からしてなかなかに聴かせる。気に入ったのはヒット曲「HEAVEN」、初期のサンタナを思わせる黒っぽいラテンナンバー8曲目の「ONDA」とかは秀逸。個人的には懐かしいウェストコースト系ポップ・ミュージックを思わせる5曲目「HOLLYWOOD」や11曲目「VELVET SKY」が好きである。明るい曲調の中にコーラスを効かせてくれる。なんともノスタルジックな雰囲気である。
個人的にはかなりストライク・ゾーンであるので、このグループ少し追いかけてみようかとも思う。しかし新しい、若いグループをたまに聴いたと思いきや、それがすでに10年選手だったりする。なんか新しいものに全然ついていけてないんだな。ただしあえて言わせてもらえば、ネットによってすぐに検索ヒットできて、それをすぐに購入したりダウンロードできる時代である。10年前だろうが、50年前だろうが、ある意味同時代的に聴くことができるということでもあるわけだ。その音楽の背景となる文脈とかを一切切り離して、現在の中での受容できるということなんだろう。
佐々木俊尚の『電子書籍の衝撃』の中で、アンビエント化という概念がうたわれている。アンビエントとは環境とかの意味らしいけど、ようは音楽、文学とかといった、まあひらたくいえば、あらゆるコンテンツが周辺環境に取り込まれていて、自由に引き出して受容できるようになるという、そういうモデルなのかな。
現実にも音楽はiTunesとかで自由にダウンロードできるし、本やCDもアマゾンを通じてたちどころに検索し手に入れることができる。そういう時代になると、音楽とかについても出自たる時代性が無意味化してくるということになる。よく使われる例だけど、今の若い人がビートルズをどう聴くかというと、けっしてオヤジ等が大好きだった古き良き古典的な60年代ポップスとして受容するわけでもないだろう。音的にだってデジタルマスタリングされているし、極端に古いわけでもない。そうなるとある意味、同時代的な形で受け容れられるだろう。聞き手によっては、単純に<良い曲><良い演奏>、まあ所謂一つの<良いミュージック>として受容されるのではないかと、まあそういうことなんだろう。
もう一つアンビエント化は、クラウドとの関係でいえば所有の概念を無効にしていくのかもしれないのだとか。かっては音楽が好きとは、いかにレコード、CDを集めるか、ようはコレクター性と同義だったわけだ。でもいまやiTunesじゃないが、音楽は曲ごとにダウンロードされるし、CDは簡単にハードディスクに取り込むことになる。かって何百枚、何千枚と所有したレコードの類は、一つのストレージに収まるし、それ以前にクラウドから引き出せばいいということになってしまったりするわけである。
まあこのへんは今頃になってやたらCD買い捲り、焼き捲っている私のようなオッサンは、はっきりいって世の中の流れに完全に逆行しているんだろう。なんたってもう700枚くらいは軽くあるもの、収拾つかないし、たぶん死ぬまでに持っているアルバム全部聴くことができないのだろう。なんか悲しいね。
「神様、どうか私目に音楽を好きに聴いている時間を少しだけお与えください。もう少しだけ長生きさせてください」みたいな感じだろうか。
そうだよね、長生きしたって、認知症とかになってしまったら持っているCDとかも本当に無意味になってしまうのだろうね。いちおう娘は「パパのCDは全部もらうからね」とか言ってくれるけど。
たぶんそんなに長生きすることはないと思う。我が家の男系はだいたい63〜64くらいで天に召されているから、その系統でいけば私も後7〜8年くらいだろうか。まあも少しはいけるかもしれないけど(なんか泣きそうになってきた)。
もしもう少し長生きして、認知症とかになって、特養とかに入って、もう全然なんにもわかんなくなってしまったりして、それでもなぜかビートルズとか聴くと、音楽に反応するなんてことになったら。まあそれはそれでいいのかもしれない。
話しはずれたな。アンビエントについては『電子書籍の衝撃』の中で引用されていたブライアン・イーノの言葉はすべてを表わしているように思える。再々引用みたいな感じであるが、こういう言葉である。

「もはや音楽に歴史というものはないと思う。つまり、すべてが現在に属している。これはデジタル化がもたらした結果のひとつで、すべての人がすべてを所有できるようになった」『電子書籍の衝撃』P48

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)

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ほんでもって何の話だったっけ、そうだロス・ロンリー・ボーイズである。このグループは買いである。