今さらながら斉藤和義を絶賛する。


以前から話を聞いてはいたのだが、実際に見る、聴くのは初めてのことだった。なかなかに骨太であり、しかもきちんとプロの演奏になっている、関心した。
この歌に関しては確か新聞記事でも読んだ覚えがある。たぶん朝日のものだろう。
asahi.com(朝日新聞社):原発安全、ウソだったんだぜ 反原発曲、ネットで話題に - 東日本大震災
この動画がアップされたのは4月の後半だったという。おそらくフクシマの事態をリアルで目にし、耳にし、いてもたってもいられない思いで、自らのラブソングにプロテスト色の強い思いをのせたのだろう。
ただし、この歌に関して斉藤自身はノーコメントである。所属事務所だか、レーベルだかの公式見解は、プライベートビデオが流出したということになっている。実に悲しい話である。原発に関しては自由な意見やこうした表現活動が許されないということの証明なのだろう。実際、相当なプレッシャーがあるのだろう。電力会社や原発メーカー、あるいは政府筋からか。でも本当に圧力がかかるのかどうか、圧力に必要以上に神経質になって、自主自主規制しているだけなのではないかという気もしないでもない。
みんなが必要以上に自主規制を続けることによって、言論がどんどん封じられていく。ソフトなファシズムがじょじょに進行していく、そんな気もしないでもない。
あるいはもっと直裁な圧力がかかるのかもしれない。かって清志郎反核ソングは見事に発売禁止になってしまった。レーベルの東芝原発メーカーだったから。あまりにも素晴らしいからという理由で、わざわざ新聞広告まで出して発禁にしたんだった。あれにより反核コード、反原発コードが実体化したんだと私などは思っている。
少し前に、娘に学校とかでフクシマの話や原発のこととかは話題にならないのかと聞いたことがある。例えば理科の授業とかでということだ。それは例えば地震に関してだと、理科の先生が授業の中で余談という形で地震についての説明とかをされたことがあったということを娘から聞いていたからだ。
娘に言わせると、原発に関しては、教師からもほとんど話しは出ないという。一度だけ、原発に関してはいろいろな意見があること、反原発の意見とかもあるが、生徒の親御さんの中には電力関係のお仕事をされている方もいるので、原発に関しての話はしないようにというようなことを言われたことがあるということを聞いた。
ひどい話である。問題のすり替えも甚だしい。しかしこれが一般的な教育現場での実態なのかもしれない。みんながみな自主規制をし、小声でしか原発のことを語れない。反原発脱原発を唱えることは現実的ではないし、電力需給に関して無責任な妄言であるということになるのだろう。
しかし斉藤和義のこの歌は、ある部分、庶民、民衆、一般大衆の率直な原発に対する思いをダイレクトに表現している。安全、安全と言われ続け、それを信じ込んできた。でもフクシマの現実を目の当たりにして思うこと、それはただただ「ずっと嘘だったんだぜ」ということだ。
この歌は今、Youtubeでしか聞くことが出来ない。それも削除と別の誰かによるアップのいたちごっこを続けているのだという。本来ならこの歌が普通にテレビやラジオといったマスメディアでかかるようになっていてもいいと思う。もっといえばCDとして発売され、iTunesで配信され、ヒットチャートの上位にランクされてもいいのではないかと。それなりのグレードというか水準以上のレベルにあるとそう思う。いつまでもAKB48だの韓流アイドルばかりがヒットチャート上位というのもどうかと思う。いやそれが悪いとはいわないよ。
ただしそうしたアイドルとかの曲が上位を占めるヒットチャートの中でこうした反原発ソングが異彩を放つ。そういうのが成熟した市民社会なんじゃないかと私なんかは思う。たぶん、たぶんではあるが、イギリスあたりであれば、斉藤のこの歌はおそらくトップ10入りしているだろうと思う。
今さらながら斉藤和義のこの歌を絶賛する。