地震被害と出版業界への影響

関東大震災の影響によりマーケットが急速に収縮している。そのことにより出版業界にも大きな影響が出てくるみたいなことをずっと思っている。しかし地震によるより直裁な影響が、しかも深刻な影響がでている。
用紙生産工場にも被害――日本製紙など - ITmedia eBook USER
雑誌や本の発行ピンチ インクも「紙」も品不足 : J-CASTニュース
三陸沿岸にある製紙工場に大きな被害が出ているので、まず紙の製造に大きな影響が出ている。さらに紙の卸問屋、代理店の倉庫が江東区埋立地に集まっている。地震液状化の影響で倉庫に大きな被害が出ている。だいたいにおいて紙は大きなロール上で保管されているのだが、これが軒並み地震で倒れた。倉庫によってはスプリンクラーの誤作動で倒れた紙がびしょぬれになってしまったわけだ。当然、一度濡れた紙は商品とならない。おまけに湾岸埋立地一帯は液状化で道路が波打ったり、冠水したりで、物流も大きな制約を受けている。
そういえばスプリンクラーの誤作動による水濡れにより、この業界ではけっこう深刻な被害があちこちで出ている。某文芸書版元の物流倉庫がこれで相当な被害を出したとか、大手取次の倉庫がやっぱり水濡れで商品駄目にしたとか。書店でももちろん被災地の大型店や郊外店でスプリンクラーの誤作動による水濡れの被害を新文化の記事とかでも見た。噂、風評の類かもしれないが都内の大型書店でもそういうことがあったとも聞く。
製紙工場や紙問屋の倉庫の被害は、地震の後比較的早くに本社のえらいさんからも話を聞いた。売上げの減少よりもまずは生産できないことのほうが深刻になりそうだということだ。紙の調達がうまくいかないため、印刷会社もえらく苦労している。そのため製本会社もいつ刷り上った半製品が入ってくるのかがわからないので、ラインが組めない。
出版社としては、まず発売の決まっている雑誌や新刊書を優先順位の上にあげるため、当然重版商品は、それこそいつ出来るのかがまったくわからない状態だ。さらにいえば、計画停電(これはもう終了したのかもしれないが)の影響で、製本所はラインも満足に組めないという。一度製本ラインを組んで機械にかけた場合、途中で停電になるとアウトになってしまうんだとか。
地震の影響は二重苦、三重苦の形で、出版業界にも及ぼしているのだ。そして紙の調達不足がこのまま続けば、当然大手中心に供給されることになるだろうから、中小出版社は相当にきつくなる。売れる売れないにかかわらず、とりあえず本を出して、取次に出しさえすれば、当座の金が入ってくるという自転車操業がぷっつり途絶えてしまう可能性が大きいのだ。そうなるとどうなるか、まあ簡単に予想できてしまう結末が待っていそうだ。
モノが売れないという、ずっと続いてきた状況も厳しい。しかしモノが作れないという現実もまた非常に厳しいものがあるのだ。