尖閣諸島問題で俄かナショナリズムを喚起してみたりする

尖閣諸島問題は大変後味が悪い結末になった。外交レベルという意味ではたぶんに出来レースだったのだろう。中国の強固姿勢はほとんどが内向きの演出のはずだ。かの国ではあんな風に日本をそれこそ仮想敵国のごとくに扱わないと、そして国内の不満を日本に向けるようにでもしないことには、鬱屈した国内の様々な問題やらなんやらとそこから生じる不満なりを抑えることができなくなりつつあるのかもしれない。
経済的に大きな成長を遂げているとはいえ、一方では経済格差は極端に広がっている。共産国家でありながら資本主義を大胆に導入したはいいが、かえって社会主義的な施策として社会福祉だのなんだのはおそらく大幅に低下しているのだろう。おまけにあの広大な領土と多民族を束ねなくてはならないわけである。
今のバブル的な経済的謳歌はいずれ破綻するだろう。そうなったらかの国はあっという間に自壊していくようにも思う。所詮共産党の一党支配と市場経済が両立できるとは思えない。市場経済市民社会の成熟とは切っても切れない関係性があるはずだから。今は成長主義でなんとか押し通しているというか、諸矛盾に目をつぶっている。でもおそらく近々にも露呈すると思う。
中国経済の成長バブルが弾けた時にどうなるか。ある意味では世界恐慌を誘発する可能性が大である。もちろん日本経済も大きな影響を受ける。経済は大きなテーマではあるにはあるから、大いに深刻な問題だろうとは思う。一方政治的にはどうか。実はこっちのほうがより深刻な問題になりそうでもある。
かの国のバブルが弾けた時、一気に社会不安、混乱が起きる。そこにこれまで押さえつけられてきた経済格差やら、地域格差やら、民族問題が一気に露呈する。さあ北京政府はどうする。へたすれば内乱の一歩手前だ。
今回中国政府が行ったのは、国内向けにナショナリズムを煽り、日本を仮想敵国のごとくに祭り上げることだった。国内に深刻な社会不安が生じたら、手っ取り早く国民の不満を摩り替えるために行うことは。そう、戦争ということにならないだろうか。中国が北朝鮮のごとくに遊撃隊国家のようになってなんら不思議はなしということだ。かっての日本が膨張主義の果てに主要国からの経済封鎖をくらって、一点突破のごとく戦争に猛進したようにである。
そのときに中国が踏み出すのはどっちの方向か。核を持つインドか、南進か、あるいはアメリカはまずこねーだろうという読みで日本か。なんかそういうことになったらたまったものではなさそうな気もする。
中国は今回の尖閣問題を含め、日本に対して様々なジャブを入れてくるだろう。日本政府の対応の如何、日米関係がどうか、日米安保の形骸化の状況はどうか、そのへんを含めて様々なジャブ、観測気球を投げてくるのだろう。ようは日本がどうのこうのではない。資源だのなんだのとか、大国意識ぷんぷんの膨張主義でもない。ようは国内の不満を外に向けさせるため、ただそれだけのようにも思えるわけだ。
そう考えると日本は大人の対応でいなしていくしかないのかなという気もしないでもない。一方でかの国の広大な市場は、ある意味日本経済にとってはおよそ生命線になりつつある状況だ。今回の中国船長の釈放に政府が関与しているのはたぶん自明のことだろう。ただしその意思決定の背景には、財界の意向なりが反映していることは間違いないとも思う。市場経済にとっては、ちっぽけなナショナリズム国益なぞ、およそどうでもいいことでしかないのだろうから。
それにしても後味が悪い、気分が悪い。日本の周辺諸国との関係性でいえば、まあ率直にいって中国にえらく舐められてしまった。おまけにわが国はかの北朝鮮にも拉致問題を含め舐められっぱなしである。さらにいえば一番近しい国、文化面では韓流等で大変親しみ安くなっている韓国からも、こと領土問題についていえば竹島の問題でも舐められっぱなしである。もはやあの島は韓国の実効支配化ある。ロシアは、北方領土がなんらの進展をみない現状がすべてを物語っている。
ようはこれが日本の近隣諸国との関係なのである。こういう状況にあってあの平和憲法の、第九条の意味性はどれほどのものがあるのだろう。あの世界史レベルでも平和を希求する理想的な条文は、近隣との国際関係にあってはおよそ無意味な文言になっていないだろうか。あるいは様々に蹂躙されてしまってはいないだろうか。
結局のところ外交にあっては様々なカードを手に脅したり、賺したりを繰り返していくことしかないのである。あの憲法の条文を最大限に利用するとしたら、様々に世界に向けてあの条文を武器に発信を続けていかなくてはいけないのである。
例えば今回のことについていえば、日本は中国の数百倍くらいの勢いで世界に状況を発信すべきだったのである。他国に武力を行使することのない憲法を持った国に対して、大国中国がえげつなく攻撃してきています。世界の皆さん、どう思います的な形でである。せっかく国連に首相が出席したのである。前面展開しちゃえばよかったのである。
とまあそういう風に九条を武器にする発想もないのである。そうであれば、周囲とのある意味緊張関係にさらされている現状であれば、積極的に憲法を改正してしまえばいいのである。はっきりと自衛隊を軍隊として認めてしまえばいい。さらにいえば当然非核三原則なんていうのも廃棄しちゃって、公然と保有を宣言しない形で核を保有してしまえばいい。イスラエル的なやり方である。
そのうえでアメリカと対等な形での安保を結べばいい。沖縄には、あるいは普天間にはアメリ海兵隊と同等の自国軍を配置すればいいのである。
当然近隣諸国からは山ほどの抗議はあるかもしれん。でもいいではないか、現在の自衛隊の規模であっても第一級の軍事力ではあるのだから。ようは舐められない、舐めさせないという外交のための一カードなんだと思うわけだ、一国の軍事力というのは。そのうえでそれに胡坐をかくことなく、他国をけっして舐めない、そういう姿勢を貫いていけばいいのだ。
もし日本が核保有国で、憲法九条をとっくに改正していたら、中国は今回のような態度をとったか。韓国は竹島を実効支配するようなことがあったかどうか。
なんとなく気分は俄か右翼的である。でも一つの真理があるのかもしれないとも思う今日この頃である。