「ガチョーン」は戦後最高最強のギャグ〜谷啓死去

http://www.asahi.com/showbiz/nikkan/NIK201009120048.html
ある意味訃報にはもう慣れっこになりつつある。ヴォネガットよろしく、訃報を見聞きするたびに「そういうものだ」とつぶやく。そんな感じである。
山本小鉄も死んだし、梨元勝も死んだ。つかこうへいも死んだ。そうみんな死んでいくのである。そのたびに「そういうものだ」とつぶやく。
しかし新聞を何気に開いて目にした谷啓の訃報にはなんとなくそれ以上の感慨めいたものがある。
クレイジー・キャッツのメンバーとしてすでにハナ肇、植木、安田、石橋が鬼籍に入っている。それでもなんとなく谷啓が生きている、元気に活躍しているということで、クレイジー的なものは健在と常々思っていた。
その彼が唐突に亡くなった。階段で転倒して脳挫傷になったという。相当に頭を強打したのだろう。ググるとここ数年は認知症アルツハイマー的な症状も出ていたともいう。78歳、年だったの一言でかたずけられるのだろうか。
谷啓といえば、やはり「ガチョ〜ン」である。あのギャグは一発で状況をすべて一転させる。すべての関係性、意味性を無化させるすさまじいものだった。1960年代という、みんなが成長のためにひたむきに生きていた、いわば真面目な時代にあって、あのギャグの威力は半端じゃなかったと思う。そしてあの時代だからこそ、あのギャグはけっしてスベルことはなかった。
クレイジーの主要なギャグはほとんどがメインを張っていた植木のものだったかもしれない。しかし時代性を超えた一発ギャグとしての威力は谷啓の「ガチョーン」だったんじゃないかと思う。あえて言わせてもらえば、あのギャグは戦後最大級のギャグだと、本気で思っている。
そして谷啓は、コメディアンとして、役者として、そしてなによりもミュージシャンとして活躍した。業界人でありながら、なんとなく誠実な人柄そのままの風貌、キャラクターだった。彼が若いミュージシャンを集めて結成したスーパー・マーケットというグループの音楽もけっこう気に入っていた。古いジャズからフュージョンまで起用にこなしていた。音楽に対してはみずみずしい感性を持っている人だったのだと思う。
また一つ昭和が遠いものになった。クレイジー・キャッツが活躍した時代が記憶の彼方遠ざかっていく。そんな寂しさがある。冥福を祈る。

ガチョ〜ン


谷啓さん・ガチョーン10連発