大塚国際美術館再訪

ゴールデンウィーク旅行の後半は淡路島に二泊した。例によって健保で利用できる南淡路ロイヤルホテルである。ここに泊まるのも5回目である。いいかげん飽きるかとも思いきや、そうでもなくけっこう毎回満足している。まあ健保利用のため宿代が安く、それでいてそこそこ美味いものが食べれて、温泉入れてということである。ほぼそのためだけに往復1000キロ以上の道程を車に乗ってやってくるのである。
淡路に来てなにをするかというと、淡路島のあちこちの観光スポットを巡ってということもなく必ず行くのが鳴門大橋渡ってすぐのところにある陶板による複製名画美術館、大塚国際美術館である。ここでのんびり西洋絵画を鑑賞して、というのがここ数年の我が家の恒例行事になりつつある、てなわけだ。通産4回目の訪問ということになる。
ここは正面玄関でチケットを購入してそこからエスカレーターでB3フロアに向かう。正面玄関前にはバス等の車寄せがあるだけで、駐車場はここからかなり離れたところにある。そこからはシャトルバスが運行していてということになっている。しかし障害者、特に車椅子の人間がいると、入場の仕方からして変わってくる。まず正面玄関のチケットカウンターでチケットを購入する。それから建物がある山全体を周遊する形で道路をぐるっと周り、おそらく資材その他の搬入用の専用入り口に向かいそこから車を乗り入れる。そのまま地下駐車場内を進んでB4フロアの身障者用スペースに車を止め、そこから資材搬出入用のエレベーターを使って展示スペースのB3フロアに向かうと、まあそういうことになるわけだ。
そしてB3フロアで最初に向かうのが恒例のシスティーナ・ホールである。四方の壁画から天井画までミケランジェロの絵画を完全に再現したホール全体にまず圧倒される。それから環境展示として有名な聖堂、礼拝堂の数々を実寸で再現したものを鑑賞する。お気に入りのスクロヴェーニ礼拝堂でのんびりしていると、気がつけばそれだけで1時間以上経過してみたいなことが常になりつつある。
そのままB3内でグレコフェルメールの部屋を鑑賞、さらに古代中世の壁画類を観てから、ようやくB2にあがる。ここはルネサンスバロックを中心に250点からの著名な絵画が展示されている。有名なダ・ヴィンチの「最後の晩餐」は修復前と修復後のものが対面展示されてもいる。ここでも数時間鑑賞を続け、ようやくB1に行く。ここでは近代、特に印象派後期印象派の美しい数々の絵画は約330点展示されている。このあたりをじっくり鑑賞していると、いつの間にか時間は4時を回ってということが常のようになってしまう。
でもターナーからミレー、マネ、ルノワールゴッホセザンヌゴーギャン、モネ、ドガなどなど。さらには北欧のムンクまで著名な絵画をのんびり観ていけるのである。ある意味時間はいくらあっても足りなくなるというものだ。そのためその上の1Fでピカソの「ゲルニカ」やポロックの「秋のリズム」あたりでタイムアウトということが、本当にいつのものパターンになってしまっている。そして2Fの現代絵画、抽象絵画の展示コーナーにはいつも行き着けないということがここ3回繰り返されていた。
そこで今回は少しは学習能力を実践してみようと思い、最初にB3でシスティーナとスクロヴェーニを観た後、妻の車椅子と一緒にいきなり2Fの現代絵画コーナーに上がることにした。娘にどうするというと、娘は娘でB3の環境展示コーナーが大好きなので別行動をとるということになった。
そして2Fの現代絵画である。ここにはピカソ、ミロ、ダリなどが約100点展示されている。圧巻である。ピカソだけでも14〜15点展示してある。青の時代からキュビニズムまで。その画法の変化はおよそこれが一人の画家の手になるものかと思えるほどの断続化された変幻でさえある。それでもその背景には天才、20世紀の巨人たるピカソのオリジナリティ、タレント性が透過しているようにさえ感じられる。すげ〜な〜と思わざるを得ない。陶板複製画であっても圧倒されるのである。これら総てをオリジナルで、しかも大塚のようなゆったりした空間で鑑賞できたら、どんなにか素晴らしいだろうとつい想像してしまう。
その他では、ミロ、レジェ、ブラック、フランシス、ポロックなどにも感銘を受けた。絵画芸術の発展のため、自己表現の発露のため、表現手段の限界に肉薄するかのような天才たちの苦闘の過程がそれぞれの作品からも読み取れる。そんな気がする。芸術のため、芸術表現のために命を削ってはきだすにして描かれた作品群に圧倒されるような数時間だった。