中学の入学式

娘の人生の一里塚というやつである。朝7時くらいに起こす。制服への着替えとかはきちんとやるのだが、いかんせんネクタイが結べない。この前の土曜だったか日曜だったかに、制服の着せ替えのシミレーションとかも行った。まあ大丈夫だろうけど、万が一サイズ間違いとかあったりしたらとかもあるし、とにかく一人で着る練習もかねてである。その時に最初にネクタイを結んであげ、何度か手順を鏡の前で見せてあげた後に自分で練習するように指示する。その後30分くらい一人で練習してなんとか結べるようになったはずだった。
当日の今日はどうか、制服はきちんと着た。でもネクタイはやっぱり出来ないという。どこまで不器なんだな、うちの娘は。しかたなく結んでやる。結び方は基本中の基本であるプレーン・ノットである。本当はウィンザー・ノットとかいろいろ教えてやりたいとも思っていたのだが、不器な娘にはちとハードルが高いようだ。
本当はね、女の子はね、きちんとネクタイの結び方のパターンを覚えておいてね、自分が好きになったどこかの誰かのために結んでやるとね、とても覚えめでたく相手からうんと惚れられるはずなんだけどな。私なんかも若い時には、そういうことを女の子からされるとね、大変相手を愛おしく思ったものなのだ。まあそういう話は置いといて。
しかし孫にも衣装である。我が娘も制服を着るとなんとなく娘さんぽくみえてくるではないか。つい数週間前までは小学生、女児だったはずなのにね。プロトタイプな反応だが、それこそいやはやなんともである。
娘の通う中学校は、それまで通っていた小学校の並びにある。通学距離はほとんど変わらない。今回の入学式も当然のごとく出席したいと妻がいうので、一緒に行く。もう我が家的には普通のことになりつつある。でも一応、車椅子でもろもろだから少し早めに行くことにする。式はこれも当たり前のことだけど体育館で行われる。当然、段差がある。
今回は小学校の時みたいに先生が出てきてくれるということもなく、妻は一度車椅子を降りて杖で段差を登った。まあこれもうち的には普通である。この体育館は選挙の時に一度来ているけど、あの時はきちんと簡易的なスロープが設置してあった。やっぱり選挙となると当然身障者の有権者もいるだろうから、設置していないともろもろあるだろう。でも入学式となると、やっぱりね。受け入れ児童に車椅子の子はいない。となればそういう準備は必要ないということになるんだろう。でもね、父兄にだってそういう方がいるかもしれないという想定があってもいいかもしれないなとは思う。
こういうことっていうのは、ひょっとしたらほんの少し想像力を発揮させる、そういう能力、努力みたいなことなんじゃないかと思う。でも組織にとってはそういう想像力は実はあまり重要視されないのだろうな。特にお役所なんかだと、かえってその手の想像力は余計ごとになるということかもしれない。仕事を増やさない。仕事を増やす可能性のある想像力は忌避すべき。まあそういうことなんだろうな。
一方では危機管理じゃないけど、想定できる障碍というか問題については、出来る限り対応策を事前にねっておく周到さも現代の組織には求められているはずではあるのだけど。まあいいや、うちの会社だっていろいろ具申しても上のほうは、現段階ではそこまで考える必要があるのかとか、問題が起きないうちにいろいろ心配してもとか、とりあえず消極的な理由から仕事は増やさない、回避みたいなことが普通になっているから。けっこうどこもそうなんだろうなとは思う。
でもあえて言うよ、公立学校のバリアはやっぱり問題かもしれないなと思う。とにかく私が知っているのはふじみ野と鶴ヶ島だけだけど、とにかく小学校にしろ中学校にしろ、全部駄目だよ。大きな段差=バリアも普通だし、小さな段差=バリアにいたっては、それこそもうところ狭しとある。これまでにも何度か書いたけれど、1960〜80年代に施工された公立学校はまず間違いなくバリア満載の建築物ばかりだ。それは作られた時代の限界、たぶんその時代にはバリアフリーだのユニバーサルデザインなどという概念自体がまずなかったからなんだろうと、たぶんそんな風に思ってきた。
でもね、うがった見方をすれば、あえてバリアだらけに作ったんじゃねえのと、最近は少し疑ってかかるようにもなっている。公立学校での義務教育には障害者を受け入れる余地はありません。障害者は専門の学校なり施設なりに囲い込んじゃいますみたいな、そういう施策の行き届いた成果として、ああいうハコ物が全国に蔓延しちゃったんじゃないかと。
体育館に入るための小さな段差はとりあえずいいとして、今回困ったこと。校舎のトイレで様式タイプが1階になかったこと。これを聞いたときはちょっと立ち眩み状態だったかな。それでもまだ4階とかではなく、2階だったけど。で、どうしたかというと、とにかく体育館を出て校舎へ向かいます。校舎に入るのももちろん段差があります。校舎の脇のところで車椅子を降りて妻は3〜4段の段差を登って校舎の中へ。そこで靴を脱いで車椅子を移動させた私はまた妻を車椅子に乗せて階段のところまで。階段にはいちおう片側だけ手摺がある。その階段を妻はう〜んと長い時間をかけて登ります。幸いなことに登りきった階段のすぐ脇がトイレだったけど。
トイレから出ると片麻痺の妻は手摺が使えないので私が手をひいて降ります。う〜んと長い時間をかけて。この作業を今回は都合2回行いました。公立学校にエレベーターがないことの不便さとかも何度か書いてきたけど、まあそれについては予算面とかも含めて難しい部分も多々あるだろうとは思う。でもね、様式トイレが1階にないのは致命的だと思う。意識しているのか、あるいは無意識になのかわからないけれど、確実に体に障碍のある人を排除することを宣言するような施設だな〜とつくづく思ってしまった。
とはいえ妻を待つ間に何人かの先生と思わしき人が、「大丈夫ですか」とか「いつでもお手伝いします」とお声をかけてくださった。校長先生らしき方も一度「ご不便おかけします」と声をかけてくれた。これはこれで大変有難いことだとは思う。救われる部分ではある。そう、人はいいのだ、問題は制度であり、構造であり、より直裁にはハコなのである。
 式典自体はまあ普通の入学式でした。やや肌寒い気候だったから、妻は4月にしてはちょっと大袈裟なオーバー・コートを着せておいたが、これはたぶん正解だったのではないかと思う。私はスーツだったからけっこう寒かった、正直。
入学式の後は生徒は教室で始めてのホームルーム。父兄はそのまま体育館でPTAの説明会。PTAの会長曰く、3年間の間に一度は役員をやっていただきます。共稼ぎとか親の介護とかそういうことは理由になりませんみたいな、ややもすればライトな恫喝みたいなお話もあった。
最初の授業参観の後にあるのだろうな、恒例の役員決めの我慢比べみたいなやつが。昔、一度だけその手に参加したことがあったけど、えらく疲れたっけ。前任の役員さんから、なんとか立候補してくださいと言われても、みんな押し黙っていて。本当に我慢比べみたいな状態なんだよな。なんかえらくむかついてきて、その役員さんにあんたの旦那さんが役員やられるなら、私もやりますけどと発言したら、先生が私の発言を遮るようにして、「お父さん、お父さんは、もうけっこうですよ」と以後の発言を禁じられたことがあったっけ。
それ以後は授業参観には出ても役員決めにはすべてパスしている。もっともうちの場合は、妻がそういうことに参加するのは不可能だし、仕事して家事やってさらに学校行事はちと難しいとそんな風に思う。それとは別に思うのだが、PTAって本当にいるのかなという部分もある。
PTAは学校の妻とかそんな話も聞いたことがあるけど、個人的な印象としていうとね、組織としていうと仕事をする組織になっていないと思う。差別でいうんじゃないけど、奥さんたちが主体の組織でしょう、ビジネスライクな動きしていないと思う部分あるな。
昔、住んでいたマンションの理事会やったときは、理事長さんがパワーエリートみたいな感じでよく仕事を出来る人だったせいか、それに釣られてけっこうよく仕事したのを覚えている。当時流行始めたメーリング・リストを使って意見交換とかもしたし、理事会の議事録とかも添付配布で理事全員に送信したりとか。なんというか異業種交流会の趣もあった。
私は総務とかそういうのやっていたから、毎回議事録作成したけど、その時の経験がその後の会社の仕事とかにもいかされているようにも思う。そういえば規約改正とかもやったし、規約を電子化し住人には加除式ファイルにして配布とかもしたっけ。
PTAもそういう組織運営するのだったら、参加してみたいと思う部分もある。でもね、どう考えても今のPTAって、奥さんたちの井戸端会議の延長上みたいな部分が多くないだろうか。
まあいい。とりあえずPTAとかについていえば、うちは消極的参加だ。ただし誰もやり手がいないのであれば、杉並の和田中じゃないけどやめちゃえばいいんじゃないかと思う。受益者負担じゃないけど、参加すれば様々メリットがあればみんなやるんじゃないのかな。
例えばPTA会費をもっと高くして、役員には手当てを出す。PTA役員をやるとご子息の内申のポイントが上がるとか、などなど。まあいいやたぶん私が参加することはまずなさそうだから。
この日は、外へ出ると陽が差している場所はけっこう過ごし易かったかなと思う。桜も満開状態だったしね。最後に生徒は外で記念撮影があり、親たちはそれを遠巻きに眺めているみたいな感じだったか。妻はというとやっぱり寒いので車の中で留守番させて、私だけ校庭で娘たちの撮影が終わるのを待った。
12時ジャストくらいに解散、家族三人でファミレスで昼食をとり、1時少し前に自宅へ戻る。それから着替える間もなく自転車で会社へ行く。慌だたしい午前中だったかな。
とりあえず桜の下で1枚。