「マグノリアの花たち」

マグノリアの花たち [DVD]
TSUTAYAの100円レンタルのラインナップに入っていたので手にとった。ハーバート・ロス監督、レイ・スターク製作。いつもの小粋な舞台ものの映画化かと思った。出演しているのが、サリー・フィールドシャーリー・マクレーンオリンピア・デュカキス、ドリー・バートンなどなどと名女優が揃っている。ハーバート・ロスでこの女優陣である、はずれはないだろうと思った。
面白かった。よく出来た映画である。アメリカ南部の小さな町で暮らす女たちの物語である。結婚、出産、葬式にクリスマス、イースター、ハロウィンなど日常の様々なポイントとなる出来事とともに物語が展開していく。しかも主舞台は町の小さな美容院。もともとが戯曲であり、美容院だけを舞台にして登場する数名の女性たちの会話の中で物語が進むというものらしい。
この映画の素晴らしさはストーリィ自体にあるのだろう。よく出来たお話、脚本である。でもそれ以上、女優陣の演技力である。ほとんど演技合戦の様相だ。その中でもやはりオスカー女優サリー・フィールドが圧巻である。娘の結婚、病気、そして死にたちあう健気な母親役を見事に演じきっている。さらに脇をかためるシャーリー・マクレーンオリンピア・デュカキス、彼女達のそれこそ掛け合い漫才のような演技にはほとんど脱帽である。
ラスト近く、娘の葬儀の後、悲しみに打ちひしがれて誰に向かってでもない怒りを露わにするサリー・フィールドに向かって、シャーリー・マクレーンを前に押し出して「殴るならこの人を殴りなさい。町中の人がそれを望んでいるから」とひょうひょうと言い切るオリンピア・デュカキスのオトボケ。あまりの意外さに押し出されたシャーリー・マクレーンまできょとんとしてしまい、サリー・フィールドも泣き笑いしてしまう。もちろんきちんと演出されたうえでのお芝居なんだろうが、まるでアドリブの演技のようにさえ見える。意外ではあったけどとても面白かった。
1989年の作品、21年前ということになる。監督のハーバート・ロスはとっくのとおに亡くなっている。でも女優陣はほとんどが健在のようで、たぶん最年長のオリンピア・デュカキスも現役でいるようだし、もちろんシャーリー・マクレーンもバイプレーヤーとして活躍している。そしてこの映画では新人であったジュリア・ロバーツはいまやアメリカを代表する女優の一人になっている。
この映画をなぜ今まで観てこなかったのかなと、ちょっと疑問に思ったりもする。こんなに出来のいい映画で、ハーバート・ロスで、この女優陣たちなのに。1989年、おそらく出版社に勤めていて公私多忙だった頃か。映画もけっして観ていなかったわけではないだろうが、おそらく大作、話題作中心にしか観れなかった頃だったかもしれない。
それにしてもその後の20年の歳月の中で、一度も引っかかってこなかったというのも不思議なようにも思う。特にここ数年はけっこうな時間をレンタル屋で費やしているはずなのにである。そうやってみると映画作品との縁とかそういうものも実はあるのだろうな、などと思うこともある。たぶん観逃している名作、佳作の類も沢山あるのだろう。この先の人生の中でそういう出会えなかった作品とどれだけ巡りあうことができるかどうか。そんなことをしみじみ思う良い映画だった。
最後に、最近は「ハンナ・モンタナ」シリーズとかにも出てくるカントリー界の大御所、すべての者の視線を胸元に集中させるスーパー・スター、ドリー・バートンがまたまた良い味を出してくれている。この人はカントリーの世界では大スターだったけど、映画出演はたぶんこれが2作目くらいだっただろうか。映画デビューは「9時から5時まで」でジェーン・フォンダ、リリー・トムリンという名女優と一緒でも臆することなく良い味だしていたっけ。今回は美容院を経営者としてある種の狂言回しのような存在を見事に演じていた。なんか南部の田舎町には必ずいそうなタイプ、ティーン・エイジャーの頃はもてもてだったに違いない、ちょっとセクシーな姉御みたいなタイプを演じている。この人も好きだな〜。