様々な眼差し

試みに今回気に入った絵画、特に女性を描いたものの幾つかを特にアップを中心に撮ってみた。こういうことが出来るのも大塚の陶板絵画ならではのことだ。まず最初にこれ。
<忘れえぬ人−クラムスコイ>

なんだろう、この高飛車な目線は。究極の上から目線ではないだろうか。クラムスコイは19世紀のロシアの画家であるらしい。美術評論をしていたというのだから、理知的なタイプなのだろう。おそらく様々な理論武装したうえで芸術表現を行う人だったのだろうと推測する。
イワン・クラムスコイ - Wikipedia
絵の全体像はこんな感じになる。力作だと思う。その冷たい高飛車な視線にも関わらず人を惹きつけてやまない魅力をもった女性だ。

次はこれである。
<フォリー=ベルジェールのバー−マネ>

接客中のバーのウェイトレスである。なのに愛想笑いの一つもない。彼女の眼差しはクールを通り越して、もはや空虚である。生活への疲れ、明日に希望ももてないそんな境遇なのだろうか。たぶんウェイトレスだけではやっていけない、もっといかがわしいこともしているのかもしれない。この虚ろな表情、その眼差しはなにかしら心惹き付けるものがある。
絵の全体像はこんな感じである。

そして最後はこの一作。
<思春期−ムンク

ここにはもう思春期という言葉に含まれる、どことなく甘美なものはまるでない。大人になることへの恐怖あるいは嫌悪感のようなものがまんま現れている。現代人の病理的かつ漠然とした不安をキャンパスに描いたムンクの資質がもっとよく現れた1作だと思う。考えようによっては「叫び」なんかより遥かに不気味だね。