インスタント沼

インスタント沼 ミラクル・エディション [DVD]
ほとんど知識なくTSUTAYAでレンタルする。しいていえば麻生久美子が出ているというたぶんその一点だけ。なんというか「ミラクルウルトララブストーリー」を観てこの女優さんのほんわかした魅力にはまってしまった感じである。だからたぶんおそらく「おとなり」もきっと観ることになるのだろう。
で、この映画である。面白い、コネタ的く〜だらないギャグ満載の映画である。それでいてとにかくゆる〜い、なんだこの脱力感はとい、タイトルクレジットを見れば、なんだあの三木聡ではないか。納得である。
そうやって観ていくと、このコネタギャグ満載はまさしく三木映画である。おなじみの岩松了ふせえりもきちんと出ている。あんまり意識しているわけでもないのだが、気がつけば三木聡の映画はほとんど観ている。DVDも持っているという状況である。たぶん彼の脱力系ワールドがけっこう気に入っているのかもしれないなと思う。
さて本作について、ストーリー性については特にどうでもいいと、まあそういう作品である。しいていえば日常性を少しずつ、ずらしていくと、裏返していくと、かくも不思議で、ユニークな脱日常性が見えてくるみたいな、まあそういうようなお話である。
役者さんでは、とにもかくにもヒロインの麻生久美子が素晴らしい。ほんわかした雰囲気、顔立ちの女優さんである。このタイプは見ようによっては、幾分かおばさん顔になってしまう部分もある。そのへんが「ウルトラミラクル〜」にはあった。でもこの映画ではさすが三木聡である、麻生久美子の美しさ、魅力を全開引き出してくれている。やっぱり女優を生かすも殺すも監督の腕一つなんだろうなと意味のない実感。といって「ウルトラ」の横浜聡子監督の演出が今ひとつだと、そういうことを言っているのではない。彼女の演出力は別のベクトルなんだろう。逆にあの映画ではマツケンの魅力がいつも以上に引き出されている。
今回の三木聡麻生久美子に様々な衣装を着せることで、さらに綺麗な彼女の魅力を引き出そうとしている、確実に意図的にそれをやっているように思えた。あるときは可愛らしく、あるときは清楚だったりと、麻生久美子の場面ごとの衣装を見ているだけで、そこそこに監督の意匠みたいなものを感じた。そしてどのシーンでも彼女はほんとうに魅力的だった。
相手役としては風間杜夫の化け具合にはびっくりである。このキャラクターは三木の前作「転々」三浦友和が演じていた借金取りと比較的似た部分があるかなとも思った。三浦友和も好演していたが、今回の風間杜夫も同じくらいに良かったと思う。そしてパンク野郎を演じた加瀬亮も飄々としてよかった。
気がつけばたぶんこの映画、三木聡作品ではたぶん一番ではないかと、そんな気がしてきてもいる。ヒロインは限りなく魅力的なコメディエンヌぶりを発揮している。脇役陣もきっちり仕事をしている。お話も以外と後半に急転っぽい流れになりつつ、それでいて実はそうでもなかったりもするが、そのへんも含めて面白く。なんか普通に映画作品としてきっちり評価できる内容。監督の作家性がきちんと反映された作品である。ある意味絶賛である。
まあしいていえば途中で若干ダレる。たぶん同じテンポでゆるゆるやってくるためということもあるのだろう。出来れば編集でワンエピソード、コネタ系カットを幾つか切っても良かったかなとも思う。
ゆる〜い映画でありながら、途中まではまったくダレさせない小気味良い演出だったので、出来ればそのままもっていって欲しかったかなと、本当に少しだけ思った。
それでも思うよ。小さく言ってみる。麻生久美子は、そのほんわかさを含めて良い女優さんだと思う。いやつくづく思う。