SUPERFLY礼賛

Box Emotions
TSUTAYAで衝動借りしてきたのだが、けっこういいぞ。SUPERFLYというからバンドなんだろうと思っていたのだが、越智志帆なる女性ボーカルだけのソロユニットらしい。ソロでユニットというのもなんか普通に変ではあるが。
しかしこのアルバムはすごい。越智志帆という子が半端じゃなくうまい、そこそこに黒っぽく、パンチがきいている。それでいてなんていうのだろう、クリアで透明感をもった声質も持ち合わせている。こういうのは天性のものなのだろう。
ユニット名のSUPERFLYは、もちろんカーティス・メイフィールドの名曲に由来しているのだとか。カーティス・メイの影響はあるかなと聴いていくと、10曲目の「SEE YOU」とかにそんな雰囲気が多少感じられるかな。越智の声質に合わせるかのように全体としてリズム&ブルースのチューンが揃っている。さらにどことなく懐かしい60〜70年代のテイストもある。曲によってはなんていうのだろう、グループサウンズみたいな雰囲気もある。なんだろうこのノリはと考えてみる。これはあれだな、スパイダースとかでかまやつや井上が志向していたノリじゃねえかみたいな感じ。
ウィキペディアで基本知識を仕入れてみる。
Superfly - Wikipedia
越智志帆が影響を受けたアーチストはこんなメンツだという。

影響を受けたアーティストや目標としているアーティストとして公言しているのはジャニス・ジョプリンの他に、キャロル・キング、マリア・マルダー、ミック・ジャガーシェリル・クロウなどを挙げている。

ジャニスはよくわかるよ。ロックをやりたい女の子の永遠のアイドルなんだろうから。キャロル・キングも好きなのか。ちょっと音的にすぐに結びつかない。でも、いわれてみればそういうテイストもあるかもしれない。そこで大昔の記憶が蘇る。キャロル・キングの和製フォロワーとしてデビューした頃の五輪真弓とこの娘(越智志帆)、けっこう似てないか。といっても五輪真弓を知っている人がまず少ないかもしれないな。彼女が「恋人よ」とかでメジャーになってムード歌謡を歌いだす以前、よりわかりやすくいえばロングドレスで「妖怪人間ベム・ベラ・ベロ」になる前のことである。
デビューした頃の五輪真弓は、黒っぽさとクリアな透明感を併せ持った圧倒的なボーカルで、すげえ子が出てきたなと思わせる大型新人だった。ピアノの弾き語りでデビュー曲の「少女」やキャロル・キングの「IT'S TOO LATE」とかを歌うのを聴いたことがあるが正直びっくりしたもんだよ。若いのにこんなにうまい娘がいるんだと。たぶん高校生くらいだったけど本当に驚いた。
五輪真弓の話はまあいいけど、越智志帆はけっこう雰囲気似ているように思う。もっとも越智志帆のほうが遥かに可愛いとは思うけど、これはある意味30年の歳月とお化粧技術の向上みたいな部分もあるかもしれん。
影響を受けたアーティストにシェリル・クロウもあげている。よしよし、愛い奴じゃないかい。このへんのテイストが私のストライク・ゾーンなわけだ。でも21世紀の現代にあって、女の子でロックやっている子でシェリル・クロウの影響受けていない人探すの、実は難しいのではないかと私なんぞは思っている。そのくらいシェリル・クロウの存在って、実は大きいのじゃないかと思うのだ。彼女の凄さはブルースやカントリーテイストをうまく取り入れてみたいなことじゃけっしてない。一番はね、音楽をやっている女の子にとってね、「こういうのアリなんだ」とか「これでいいんだ」みたいな感覚の音楽を始めたことなんだろう。あんまり根拠のないことだけど、そんな気がする。
2000年からこっち出てくる女性ボーカルは、ある部分みんなシェリル・クロウの影響を受けているんじゃないかと私なんぞは思っている。YUIとか聴いてもそんな感想を持った。少なくともロックテイスト、ブルーステイスト的なものをやりたい女の子はみんな思ったんじゃないかな。黒人真似してもしょうがないし、たぶん勝ち目ないでしょ。だったら自分にあったロックを普通にやればいいんだと。それがシェリル・クロウのスタイルだったんだと思う。
シェリル・クロウはジャニスみたいに絶叫しないし、黒人みたいなノリもない。かといって60年代のフォーク・ムーブメントとも違う。ティーンの頃から聴いていた大好きなミック・ジャガーみたいな歌だってやってみたい的な感覚だな。
脱線と脈絡がなくなってきたけど、再びSUPERFLYに戻す。越智志帆もまたミック・ジャガーが好きなようだ。それはこのアルバムを聴いていてすごくわかる。ところどころにストーンズ的な曲調、ノリ、アレンジがある。実は最初にアルバム聴いた時に思ったのがそれだ。この子たち、ストーンズのフォロワーじゃねえという感想。3曲目の「How Do I Survive?」はまさしくストーンズテイストのアレンジだな。イントロのギターはほとんど完璧にキースのそれだろう。こういうのにおじさんはシビレるのだよ。でも妙に初期のストーンズに振り過ぎているのが、若干に鼻につく部分もある。
出来ればホーンを入れても良かったじゃないかと思う。そのほうが重厚感でたしシェリル・クロウの「There Goes The Neighborhood」みたいなカッコ良さでたんじゃないかとも思う。この曲なんかはおそらく同じストーンズでも’80年代から’90年代にかけてのそれをインスパイアしていると私なんかは思っている。アルバムでいえば「Steel Wheels」あたりかな
まあいずれにしろSUPERFLYの音楽にはおじさんたちのロック&ロール的記憶をくすぐるものが満載なのである。60〜70年代にロックの洗礼を受けて、今だ人知れず密かに聴いているロック好きオヤジにはたまらない部分があるのではないかと思う。これを受け狙いのコマーシャルでやられては鼻白むところなのだが、なまじ越智志帆のボーカルがホンマものなのでとりあえず許すみたいな感覚だ。すでにテレビとかで聴いたことがある人が多いだろうが、ぜひSUPERFLYはアルバムを通して聴いてみて欲しい。それだけの価値があると私は思っている。