匿名献金 鳩山家から

asahi.com(朝日新聞社):匿名献金の大半、鳩山家から 偽装総額2億円に - 2009政権交代
 朝日の25日朝刊の一面に出ていた。一部引用すると。

 鳩山由紀夫首相の資金管理団体をめぐる偽装献金問題で、04〜08年分の政治資金収支報告書に記載された計約1億7717万円に上る小口の匿名献金の大半が、鳩山家の資産管理会社「六幸商会」(東京都港区)の管理資金だったことが、関係者の話でわかった。収支報告書の元となる会計帳簿にはこの分の寄付者などの記載がないことも判明。偽装献金だった疑いが強まった。

ようは例の故人からの献金とかの、個人献金を偽装した分の金の出所が鳩山家からだったということが判明したということだ。広く浅く一般市民から政治献金を募って、それで政治をやっていこうという政治資金規正法の正しき理想に反して、金が集まってこない。政治にはやっぱり金がかかる。大金持ちの鳩山君が考えたのは、自分のお金を持ち出してそれを個人献金を集めたことにしようと。
早い話がそういうことなんでしょう。他所から金引っ張って、それで私腹を肥やしたわけでもない。企業とかから利益供与みたいな形で金引っ張って、それを原資に自らの権力基盤を強固にしていこうとしたわけでもない。そういうのは昔々の田中角栄とかの手法なのかもしれないな。
それに対して企業とかから金集めれば、何らかの形での利益供与、誘導とかそういうことにもなりかねない。とはいえ政治には金がかかる。そういうことで税金から政治に金を投入するという形で政党交付金とかの制度も始まったのでしょう。その政党交付金を源泉にして自らの政治基盤を固めようとするような手法が現在主流となっているやり方でもある。それが例えば自民党から派閥を形骸化させ、幹事長職の権限を増大化させてきた。現在、民主党小沢一郎がやっているのも、こういうやり方でしょう。党に入ってる金を一元的に党の機関執行者が握る。それにより様々な影響力を行使するということだ。まあ、集まった他人の金をあたかもぜんぶ自分のもののようにしちゃうみたいな。
民主党は結党時から鳩山家がオーナーであるというのは、あまり語られないけど結局そういうことなんだろうと思う。政党を作り、運営していくというのは半端じゃない原資が必要。それを供給する打ち出の小槌が鳩山なんじゃないのかなと思うわけだ。見るからに政治オンチそうな、人の良さそうな、ボンボンそうな鳩山兄弟が政治の世界である種メインストリームを歩いてこれるのも、鳩山家の財力というものがあるからなんじゃないのか。
もし鳩山由紀夫にバックボーンとしての鳩山家の財力がなければ、彼は首相になれたのかどうか。小沢一郎が彼を粗末に扱えない理由は鳩山家の財力があるからではないのか。小沢は今度の選挙で自身の配下の国会議員という数の原資を手に入れた。民主党に入る政治資金を一元的に管理する強大な権力をも得たはずだ。民主党の雇われマダムから文字通り闇将軍としての権力を手に入れつつある。それでも現在のところ小沢は、鳩山由紀夫の川上に立つまでにはいたっていないと思う。なぜか、それは鳩山が大金持ちであり、民主党がその成り立ちからずっと鳩山家の財力をバックボーンに形成されてきたからなんじゃないのかと。
偽装献金政治資金規正法に抵触する不法行為であることは事実だろう。朝日の記事の中にもこうある。

資金管理団体に1年間に献金できる上限は政治家本人が1千万円、一般の個人が150万円と政治資金規正法で定められており、首相や親族の献金額が同法の量的制限に抵触する可能性も出てきた。

でもなんとなく、なんとなくではあるが、今回の偽装献金、匿名献金問題の記事を読んでいると、こんな感想も浮かんでくる。「いいじゃないか、他人の金を着服したわけでもない。金持ちが自分の金を自分が出したのじゃなく、人様から篤志を受けたように装っただけなのだから。考えようによっては美談じゃねえ」みたいな感覚である。
もちろんこれは間違いである。政治献金は、しかも小口の献金は非課税のはずだから、鳩山家のやったことは脱税行為になりかねない部分もある。金持ちなんだから、きちんと税金も払って、そのうえで趣味の一部として政治なりなんなりにもお金使えばいいと。税金から政党交付金もらっているのだから、その税金の原資も出しなさいよと。どうせ鳩山家の財力なんて、ブリジストンの創業一族としての株だのなんだので、自分たちで稼いだものなんかなんもないのだからね。まあこのへんからは貧乏人の僻みみたいなものだけど。
ただし昔から金持ちが資財を投じて、福祉をやったり、政治をやったりとか、そういう美徳めいたことが資本主義社会にはいくらでもあったのだとは思う。いわばね、金持ち社会の伝統というか、神話というか、持っているものは、その一部を持たざる人々のために提供する。そういう美談があちこちにあることが前提の資本主義社会みたいな部分もあったのだよ。19世紀から20世紀初頭にかけての多分根拠のあまりなさそうな言説かもしれないけどね。
昔は、日本にもいたような気がするよ、そういうタイプの政治家が。金持ちが政治家やって資財を投入する、趣味は政治とほざく金持ち。知っている人は知っているだろうけど、藤山愛一郎なんてそういうタイプの人だったんじゃないか。後、宇都宮徳馬とかもそうだったように記憶している。いずれも自民党系のリベラルな政治家だったが、高潔な人だったように記憶している。
金で権力を買うというのは問題だとは思うが、金持ちが資財を供じて政治をやっていくというのは悪いことじゃないと思う。少なくとも金持ちと貧乏人の住み分けが当たり前のこういう社会にあってはだ。だから私的には、鳩山の匿名献金問題に今ひとつ厳しい見方ができない部分がある。「権力行使して人の金を懐に入れたんじゃない。自分の金をつぎ込んだだけなんだから」みたいな部分だ。