これはきちんとソフトを買ったマイコレクションである。たぶんDVDとしては最初に購入した1本ではないか。
名画である。もう繰り返し繰り返しどれくらい観てきたことか。最初にこの映画を観たのはどこの劇場だったろう。なんとなく京橋の今は亡きテアトル東京だったような気もする。しかしそれ以前に父親と二人で出かけて観た記憶がある。二館の劇場が併設されていて一館では「2001年宇宙の旅」をやっていた。もう片方の劇場でやっていたのが「風と共に去りぬ」である。私は小学六年生だった。私がその時観たかったのはもちろん「2001年」である。しかし父は私こう言った。
「今のお前にはたぶん『2001年』はわかるまい。それよりもお前がこれからもずっと映画を観ていくのなら、今観るのはこっちの映画だよ」
父が勧めたのは当然「風と共に去りぬ」だった。父は私が小学3年生くらいの頃から良く映画に連れていってくれたが、父のベスト映画は常に「風と共に去りぬ」だった。あの映画には「映画」の素晴らしさがすべて揃っているというのが父の口癖だった。
実際のところ小学生の私には「風と共に去りぬ」もいささか早すぎたのかもしれないが、あの長丁場の映画に飽きることなく、けっこう楽しく観ることができた。確かにビビアン・リーの美しさやクラーク・ゲイブルのかっこよさというのはなんとなく実感できたし、大画面に描かれる南北戦争時代のアメリカの姿には圧倒されるものがあった。
後日談ではないが「2001年」を私が観たのはおそらく大学に入った頃だった。映画評論とかを読んだりするいっぱしの映画通を気取った頃だったので、この世紀のSF大作の良さはそれなりに堪能した。しかしその時思ったのは、あの時、小学6年生の時に観なくて正解だったなということだった。たぶん12歳の子どもには「2001年」の意味はまったくわからなかっただろう。ある部分この映画にはそういう難解さがあった。もっともその後何度も見返してみると意外とあんまり意味性とかを問うことのなく単純なSF映画として楽しめばいいのではないかとも思うようにもなった。キューブリックはタルコフスキーではない。一級の商売気たっぷりの職人監督なのだから。
と話は脱線するのだが、正直五十代にはいってだいぶたつ身である。しかも時代は21世紀である。今更「風と共に去りぬ」に感動できるかどうかというとやや疑問とするところもあるにはあった。観終わった感想は、どうしてどうして名画というものは時代を超越しとるよと思ったね。3時間42分という長丁場なのにちっともだれることなく観ることができた。
実は今回は半分強制的に娘と一緒に観た。私は小学6年生の時にこの映画を観て映画に開眼した。娘にはこの映画がどう映るか興味があった。娘は小学生の割りにはけっこう映画を観ているほうだとは思う。まだまだディズニーアニメが大好きだが、新作映画とかもDVDを中心によく観ている。だから「風と共に去りぬ」も十分鑑賞できるんじゃないかと思った。
DVDは両面仕様なのだが、とりあえず片面の第一部は全部きちんと観ていた。さすがに第一部終了したのが1時近かったのでそのときはそこで終了。第二部を娘とは後日日中に観た。もちろん私はそのときに深夜にも関わらず第二部も通して観たけれど。
娘に感想を聞くと、けっこう面白かったとのこと。クラーク・ゲイブルの良さは残念ながらわからないようだ。スカーレット・オハラの自己中な性格には凄いねと。そしてやっぱり美人は得だとも。あとバトラーがスカーレットを皮肉って「趣味は好きでもない男と結婚することか」の台詞に笑い転げていた。
どのくらい娘の中にこの映画の良さ、すごさが残ったのかはわからないけど、これからたくさんの映画を観ていけばいくほど、この映画の素晴らしさが確認できると私は思っている。