「落下の王国fall」

ザ・フォール/落下の王国 特別版 [DVD]
TSUTAYAに通っていてずっと気になっていた映画なのである。やけに映像に凝っていて、しかもそれがCGを一切使っていないということも妙に気をひく、そんな解説がやパッケージの画像なのである。インド出身のターセムという映像作家についても知識は皆無なのである。
1910年代のアメリカ西海岸の病院でのお話。生きることに絶望した若者が好奇心旺盛な少女に物語を語っていく。その内容が圧倒されるような美しい映像となって画面にあふれ出す。そういう一種のファンタジー映画なのである。
確かにその映像が素晴らしい。世界遺産13ヶ所を含む24ヶ国以上でロケを敢行したのだという。そういう風景の美しさもさることながら、それぞれのカットに趣向が凝らされていて、すべての映像をそれぞれ静止させてしまえばそのまま絵画にでもなるのではないかと思えるほどに構図を含めた趣向がある。ターセムなる監督の才能がいかんなく発揮されているということだ。実際のところ、本当にこんな景色、こんな映像ありえると思えるほどである。
しかし映像がどれほど美しくてもそれだけではただの環境映画(=動画)でしかないのである。ストーリーが、物語を動かしていく演出が、テンポが、ようは映画を構成する要素がかなりの点で弱い、致命的に弱い。そのため美しい映像が眼前に現れていても引き込まれない。そのへんがこの映画の一番の問題点だ。これなら「アース」とかその手の映画観ていたほうがよっぽど映像的にも関心するだろうにとさえ思う。
聞けばターセム監督、CM系をもっぱら撮っていた映像作家だとか。なるほどなるほどというか、ようは綺麗で人の目を引く映像作るのは手練の技というところか。でもねそれぞれの映像に意味を持たせて、それを紡いでいくことで物語を語っていくというのは、そうそう簡単ではないのだと思う。もしもフェリーニにこういう映像的題材があったら、もっと想像力を喚起するお話ができただろうにとも思う。
というようにほとんど酷評的な感想ではあるけど、そんなにつまらない、しょうもない映画ではないとは思う。綺麗な動く絵葉書を見たい方にはお勧めである。