昨日は鶴ヶ島の江奈で1時過ぎまで深酒してしまった。週の初めだというのに何をやっているんだか。美味い酒と美味い音楽、それに美味い焼鳥である。ついつい長居をしてしまう。
このアルバムもけっこう帰る間際にかかり、「あっ、これ大好き。貸して」みたいな感じでやや強引に借りてきてしまった。けっこう個人的に思い入れのアルバムである。30前後の頃に愛聴していた。その頃につきあっていた女と一緒いる時に二人で一緒によく聴いた。だもんで、1曲目の「I do it for your love〜きみの愛のために」がかかるとなんとなくその頃のことが蘇ってくる。けっこうビビッドに。20年も前のことなのにまだどこかで引きずっている部分もあったりする。分別ざかりもとっくに過ぎたオヤジなのに。
まあそれは置いといてだね、本作である。ビル・エヴァスの晩年の作である。亡くなる2年前、1978年のアルバムである。ジャズ・ハーモニカのパイオニア、トゥーツ・シールマンスの共演である。ハーモニカとピアノの共演。ある意味企画もの系である。一般的に企画モノ系はうるさ方からの評価が低い。しかし以外と隠れた名盤というか、琴線に触れるものもけっこうあったりする。ビートルズ人気にあやかっただろうグラント・グリーンの「抱きしめたい」とかもけっこう好みである。
この「アフィニティ」についていえば、エバンスのリリシズムとシールマンスのハーモニカのそれが見事にマッチしている。ある意味それがすべてのアルバムだ。あとはエヴァンスのコンボのベーシストとして、スコット・ラファロ、チャック・イスラエル、エディ・ゴメスに続く4番目にして最後となるマーク・ジョンソンが初参加したアルバムであること。エバンスがエレピも弾いていることなんかがウリというか特徴のアルバムである。
でもとにかくもの哀しげなシールマンスのハーモニカとそれにかぶさるエバンスの理知的なピアノ。ある意味癒し系だな。入魂プレイとか、テクニックがどうのとか、所謂時代を画くする問題作みたいなものではない。リラックスしてしみじみ聴くタイプのアルバムだ。その中でエヴァンス、シールマンスの高い技術に裏打ちされたインタープレイみたいなものはひしひしと心にしみこんでくる。そういうアルバムである。
なんとなくキャリア的にエヴァンスのほうがはるかに長い印象があるのでエヴァンスがシールマンスよりも年上のようにお思ったのだが、実はシールマンスのほうが7も年長である。エヴァンスは1929年生まれ。80年に亡くなったのだから51歳だったわけだ。早世だな。自分はもうエヴァンスの年齢を上回ってしまったのかと思ったりもする。年いってくるとそんなことばかりになる。
シールマンスは1922年生まれ。ウィキペディアの記述を信じればまだ存命のようで今年87歳になる。長命だな。ステファン・グラッペリもそうだったけど、ヨーロッパ系のこうしたパイオニア達がけっこう長生きしてくれているのもうれしい。ウィキの記述をみるとジョン・レノンがシールマンスをリスペクトしていたなんてことも書いてあったりする。たぶんそういうエピソードが残されているのだろうけど、そういうのを読むとなんとなく嬉しくなる。
トゥーツ・シールマンス - Wikipedia
シールマンスはその人柄も含めてけっこう万人に愛されているようで、よくハーモニカおじさんと呼ばれるのだとか。確かに演奏も含めてけっこう人柄の良さを感じるな。以前Youtubeでシールマンスのコンボの演奏中にスティービー・ワンダーが飛び入りで出てきて一緒にハーモニカ演奏を行うというのを観たことがある。一流のハーモニカ奏者であるスティービー・ワンダーがシールマンスをリスペクトしていることが画面からも感じられるような楽しくも心が和む映像だった。
スーパー・スターであるスティービー・ワンダーは頭に超がつく一流のハーモニカ奏者だ。いろいろとセッションに参加しているし、それこそポップ・ソングでハーモニカのソロが入っている時に、「これ誰」と聞かれたら、とりあえずスティービー・ワンダーと答えておけばたいてい当たりだったりもしたものなのである。代表的なところではユーズリミックスの名曲「There Must Be An Angel」の間奏とかチャカ・カーンの「I feel for you」とかもそうだったように記憶している。よくグルーヴしたハーモニカを聴かせてくれた。
Youtubeでシールマンスとの共演がまだアップされているか検索してみると以外と簡単にお目当ての演奏にいきついた。名演奏だと思う。