「THE WOODEN GLASS」〜BILLY WOOTEN

ライヴ
なんだこれは!!すげーぞおい、つう感じの凄いアルバムだ。久々はまった。名盤、快作である。とにかく一度通して聴いてからというもの、ここ数日私のオーディオ・プレイヤーを独占している。家にいる時は朝な夕なに、暇さえあれば聴いている。いやはやまいった。
最近、なんとなくジャズ・ファンクがマイブームになりつつある。基本的には60年代後半から80年代前半くらいの時期か、ジャズ屋さんによる8ビート、16ビートのジャズである。基本、黒人ミュージシャンの真っ黒な、所謂一つのアーシー系ドファンキーである。ギター、ベースは基本電気、これにオルガンが入ってみたいな奴である。
元々資質的にこのへんは昔からストライクゾーンである。70年代に思春期を過ごした人間である。正統派ジャズというよりもクロスオーバー、フュージョン系である。こういう人間にはなんといっても8ビート、16ビート系なのである。背伸びして4ビートを聴きこんでも根がズ・ズン・チャカ、ズ・ズン・チャカなのである。悲しい性なのである。
このマイブームはここ二ヶ月くらいずっと続いている。以前グルーブ・ホルムズについて書いたりしたがリチャード・グルーブ・ホルムズ - トムジィの日常雑記、その流れがずっと続いている。グルーブ・ホルムズの流れからジミー・マグリフとかも聴いた。ホルムズの方が良かった。マグリフは黒過ぎる。同じ黒ならジミー・スミスでOKと個人的に結論を出す。その流れからどんどん逸脱しロン・リーヴィーとかベーカー・ブラザースとか訳のわからないものにも手を出したりもして。そしてビリー・ウーテンに行き着いた。
いや〜、しかし音楽は当たり外れが沢山ある。だからいろいろなもの聴かなくちゃというのは真理だなと思う。ジャズ・ファンク一つとっても様々なアプローチからの名演奏やらどうしょうもないものやら、本当に様々なのである。数多あるアルバムの中から自分のストライク・ゾーンにどんぴしゃりのものに行き当たる確率など極端に低いはずなのだから。かくしてビリー・ウッテンに行き着いたのはある種の僥倖なのである。ある種の蓋然性なり、偶然の産物なのである。
などとまあ能書きはどうでもいい。本作はグラント・グリーンのレコーディング・メンバーで結成したグループ、ウッドゥン・グラスによるライブ盤である。メインでフューチャーされているのがヴァイブのビリー・ウッテン(WOOTENだからウゥーッテンとか読みたくなるな)。その他のメンバーはエマニュエル・リギンズ(オルガン),ウィリアム・ローチ(ギター),ハロルド・カードウェル(ドラムス)だからカルテットなのだ。ウッテンがこの時期インディアナポリスを拠点に活動していたので、その地での小規模なナイト・クラブでのライブを収めたものだ。
インディアナポリス、ジャズシーン、あるいはミュージック・シーンからしても辺境の地である。メインストリームから遠く離れた田舎ミュージシャン、田舎バンドと謗られてもいたし方ないような部分もある。なのにこのアルバムの熱狂、音、リズムの洪水はなんだといいたくなる。これだからアメリカン・ミュージックの裾野の広さといったら、みたいな感想を素直に思ってしまうわけなのだ。
 ウッテンとこのメンバーの特徴を一言で表現するとどんな風だろう。個人的にいうとだな、70年代にライオネル・ハンプトンジミー・スミススタンリー・クラークビリー・コブハムをバックにノリノリ16ビートファンキーを奏でたみたいな感じである。どんなんだよと聞き返されたら、「まあいいから、いいから」と適当に答えるしかない。
1曲目の「MONKEY HIPS AND RICE」、3曲目の「JOY RIDE」のノリノリ、リズム・サウンズには圧倒される。ドファンキーなナンバーとメローなナンバーが交互にかかる。2曲目の「WE'VE ONLY JUST BEGUN」はカーペンターズで有名なポップチューンだ。そしてウッテンの名曲チューンといわれる4曲目の「IN THE RAIN」。メロー・チューンである。叙情性に富んでいる。聴いていてなんとなく泣きがはいる。文字通り涙が出そうな、そんな心に染み入ってくるナンバーである。危ない、危ない。本当に泣きそうになるのだ。ここ数年でもこんなに我が心根にずかずか入り込んできて、しみじみ、しんみりさせる、まさしく直球ど真ん中で突き刺さってくる曲は久しぶりなのである。
ウッテンについてはほとんど基礎知識がない。ウィキペディアとかにも記載がない。本当に知る人ぞ知るというミュージシャンなんだろう。でもこの人はホンマモンだと思う。ぐぐってもあんまり記述が少ないのだが、以下のサイトを参考にした。
ビリー・ウッテン - ダイキチデラックス -
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