風穴、氷穴

またまた伊豆旅行の続きである。
最終日箱根の宿を後にしてすぐに御殿場から河口湖方面に帰路をとった。前日沼津から箱根に向かったときに山道を通り岩波から湖尻に出た。けっこうスムーズに行ったつもりだったがあにはからんや箱根は大渋滞の真っ最中。桃源台から仙石原の保養所まで1時間半以上かかった。ふだんであれば20分もかからない距離なのにである。おそらく仙石原の138号線にぶち当たるT字路でひっかかっているのだろう。138号線は小田原方面、御殿場方面のいずれか、あるいは両方が目茶込みなのだろうと想像した。
保養所の食事は6時からで、当初の目論見では遅くとも5時半頃には宿につけると思っていたのだがこの渋滞のお陰で宿に着いたのは6時15分過ぎだった。チェックインの時に渋滞の話をしてみると、うちだけでなくまだ着けないお客が何組もいるということだった。
そういうことがあったので、これが三連休の箱根の姿なのだということは極めてシビアーに認識した。とにかく目茶込みなのである。これではどこへ行っても駐車場は一杯だろう。大変な目にあうだろう。だれば速攻退散すべきと思い最終日は箱根観光を一切せずに御殿場から河口湖へ出た。天気も下り坂だったので少しだけ観光するかと思い、子ども時代に父と行ったことがある風穴、氷穴へ行ってみるかと考えた。
洞窟見学は基本車椅子の妻にはとうてい無理かとも思ったが、妻は昔から洞窟系がけっこう大好きなのである。風穴、氷穴の話をするとすぐに「行きたい」を連発した。アップダウンがありいくらなんでも難しいだろうというと、行けるところまでで構わないというのでとりあえず向かった。
風穴、氷穴はというとまあこういうところなのである。
青木ヶ原 樹海 で洞窟探検ができる 鳴沢 氷穴
最初に氷穴に行ってみる。車椅子の彼女を連れて娘と三人で受付付近でうろうろしていると係りの人がきて、「車椅子の人は無理です」と無碍に一言。多少は杖で歩けるけどと一応言ってはみたが、とにかく急な階段がある。階段のステップも狭くて足場が悪い。洞窟内は中腰になって進む場所もあるので体の不自由な方はまず無理ですという。仕方がないので妻を一人土産物屋に残して娘と二人で洞窟見学へ行った。
ここに着たのはいつ頃だろう。中学か高校くらいか、そのへんの記憶はおよそ不鮮明だ。ただ亡き父と二人で訪れたこと、けっこうエキサイティングな洞窟だったということ、奥の竪穴は江ノ島まで通じているという言い伝えがあることなどを憶えているだけだ。
久々の再訪なのだが、印象的にはこんなに狭かったっけというところだ。娘と二人でけっこうゆっくり目に回ったつもりだったが、それでも10分足らずで出てきた。出口のところで妻は車椅子で待っていて、「どうだった、私でも行けそう」と盛んに聞いてきた。氷穴の入口で説明してくれた係りの男性は、けっこう丁寧に対応してくれて、氷穴は狭いけど風穴は広い。風穴なら全部は行けないけど、一部なら杖で行けるかも知れませんと案内してくれた。
そして風穴なのである。ここは駐車場から少し樹海の遊歩道みたいなところを歩く。それから受付を通りまたしばらく歩いて洞窟の入口まで行くということになる。受付のところで出てきた男性が体の不自由な方は駄目ですと言う。妻と二人でとりあえず行けるところまででかまわないと食い下がり、三人分の入場料を払おうとすると、妻の分はいいという。たぶん行けないと思うからという理由だった。
実際中へ行ってみる。確かに氷穴よりははるかに広い。広い分歩く距離も長いのだが、ほぼ総ての工程で竹でできた手摺がある。結果としてどうだったかというと、妻は全工程なんとか歩いて一番奥まで行き戻ってきた。帰りはかなりへろへろになっていたけれどもなんとかなった。まあこうやって日光東照宮も参拝したんだっけとも思った。とはいえ風穴は手摺がきちんとあったので、東照宮よりははるかに安心できたようにも思った。でもこけなくてよかったとは思う。一応階段では妻のやや下に私がいて万が一の場合支えるつもりでとは思ってはいるのだが、その万が一があったらまず妻を支えきれないだろう。ある意味そのまま奈落の底へなのだ。
例によって妻は洞窟見学ができてそれこそ誇らしげにしていたけど、こういうのはもう幾分かセーブさせないとあかんかなとも思った。こけたらおしまいなのだから。とはいえ完全片麻痺とはいえ、まだまだ体力があるだけにこういうことで活動範囲が広げることは必要なのかもしれないとも思う。難しい部分でもある。
<このようにして降りていく>

<洞窟内は意外と明るい>