団塊退職金借金頼み

http://www.asahi.com/job/news/TKY200811130300.html

団塊の世代が定年退職期を迎え、退職金を支払いきれなくなった自治体が借金に頼り始めている。今年度は都道府県のうち44道府県が借金を計画しており、総額は4200億円を超えることが朝日新聞の集計でわかった。借金が事実上解禁された2年前と比べて2.5倍という急増ぶりだ。退職金減額など身を削る動きは鈍く、安易に将来へツケを回す自治体の対応に批判も出ている。

昨日の朝日の一面に載っていた。一面にこの記事である。ある意味記事ネタがなかったのでしょう。でもこれはある意味大問題でもあるとは思う。この記事を朝刊一面に持ってきたのは朝日の見識でもあり、社会への問題提起にはなるだろう。けっこうインパクトは強い。ただし一面的な見方をされちゃうと単なる公務員批判だけになってしまうようにも思う。
それにしても、どうにも納得できない話である。記事の中に総務省統計で都道府県職員の定年退職金は平均で2700〜2800万円台とある。それで団塊世代は沢山いるから当然金が足らない。ただでさえ地方自治体の財政は逼迫している。国家財政と同様にだ。金がないから借金をする。それが退職手当債という地方債になるという。
民間企業でこれはあり得るだろうか。たぶんやっている会社もあるかもしれない。退職者が沢山でて金がなくなって借金みたいなこと。昔々、ある有名な出版社が危ないという噂が業界のあちこちで流れたことがあった。その理由が定年退職者が沢山出たからということだった。その会社は当時賃金が売上に比してやたらバカ高く、退職金も半端じゃなく高額だったそうな。業界の人はそのへんの知識があるから、けっこう信憑性のある噂とされた。

「○○どうも危ないみたいよ」
「どうして?」
「定年退職者がいっぱい出たらしいから」
「ふ〜ん、なるほど」

なんか、あり得るという感じ。
結局その出版社は潰れなかった。でもそれから何十年もかけて長期低落していき、高額だった賃金は世間相場くらいまでに激減したらしい。
まあその出版社の話はあんまり一般的な話にはならない。出版業界自体があんまり普通じゃないからね。だけど現実問題として、今団塊世代の退職ラッシュのために退職金の原資のために借金をするような民間企業はあり得ないと思う。そんなマイナス要因のために金を貸すような銀行もあまりないだろう。もとより民間企業では団塊世代の退職ラッシュにもっと早くから備えていて、早期退職やら退職金の減額やらいろんなことを行っていたようにも思う。
そうなんで今頃こんな話が出てくるのかということだ。記事の中でも慶応大准教授の土居丈朗つう人のコメントが載っていた。

予測できたのに
将来の世代は退職した公務員からは何の恩恵も受けないのに、税負担を迫られる。退職手当債は問題の多い借金だ。団塊世代の大量退職は以前から予測できたのに、備えてこなかった自治体や総務省の責任は大きい。民間企業のように、退職金の財源を毎年積み立てていく制度を早急に作る必要がある

そう、そういうことである。本当にそう思う。団塊世代の退職ラッシュは当然予測できたはずなのである。退職金の原資の問題、一挙に退職者が出て業務が停滞しないかどうか、組織内で業務が円滑に遂行できるよう人が育っているか、まあいろいろここ10年くらいにそんな話がでてきていたはずだ。なのになぜ今頃になって急に将来の世代にツケを回すような借金の話になるのか。ようは自治体にしろ、国にしろ、こいつら役人どもは、あるいは政治家どもは、実はなんも考えていなかったんだろう、と急に安易な役人批判、政治批判の一つもしてみたくなってしまう。
しかし公務員にも民間の常識が導入されることが望まれますね。退職金の平均が2700〜2800万台っていうけど、それは財政との関係でどうなのでしょうという基本的なお話です。さらには退職金の財源を積み立てるという当たり前といえば当たり前の制度すらないということの問題。
公務員の側からすればいろんな言い分はもちろんあるのだろうとは思います。財政状況によって退職金を減額させるためにはたぶん法改正とかも必要なのでしょう。制度がないのに恣意的に退職金を増やしたり減らしたりはできないということもあるでしょう。
でもですね、例えば夕張市の職員の皆さん。あの人達の退職金もやっぱり2千数百万円にもなるのでしょうか。もうねきっちり言うとね、借金するくらいなら財政破綻させちゃえばいいのですよ。もしくはね職員の退職金払うために思いっきり行政サービスを減らしちゃうんです。大量退職者が出ました。だから自治体財政が思いっきり逼迫してしまいました。ですから道路も直せません。保育園も作りません。介護保険サービスもほとんど出来ません。市民の皆さん、出来ることはすべて自己責任でお願いします。はい、すべては市のため県のために一生懸命頑張ってきた職員の退職金のためです。彼等の労苦に答えるため市民の皆さんの犠牲が必要です。
暴動が起きるかどうか。日本国民は羊的だから意外とすんなり受け止めちゃうかもしれない。
もう一つ団塊世代の人々はこの記事とかを見てどう考えているのだろう。ネットでぐぐってこんな記事を見つけました。
団塊退職金借金頼み | 各種問題点を鋭く追求したり、しなかったり - 楽天ブログ
 ネットウヨとかに共通する朝日批判であるのであまり賛同はできないのだけど、この方はどうも団塊世代の方らしい。そのうえでこの方わりと普通にしれっと語られる。

団塊の世代は高度成長期に馬車馬のように働き、日本経済の成長を助けたのだから、これを支払うのは当然であるのに・・・・・・

確かに団塊世代の方々が頑張っていらっしゃたことはわかる。でもですね、団塊世代の方々は70年前後に大学出てお仕事頑張ってこられた方々です。80年代、90年代を中堅として企業、国、自治体を切り盛りしてこられた。そして2000年以降はたぶんトップかそれに付随する責任ある部署で激務をこなされてきたんです。
今問題になっている上は国から下は市町村までの財政逼迫も、バブル経済の破綻とかも、あるいは現在の世界規模での金融危機とかも、みんなあんた方の世代が行ってきたことのツケなんじゃねえのと思う部分もあるわけだ。さらにいえば、今の政治状況とかにしたって、あんた方がまともな政党に投票してこなかった、まともな政治家育ててこなかったことのツケでもあるのである。
俺たちは馬車馬のように働いてきた、というけどその結果が今の世の中なんです。それに対しての責務とかを果たすことなく、頑張ってきたから退職金は当然支払ってもらわなくては。金がないなら借金してでも払ってねというのは、どうなんだろうという気もします。たぶん2千数百万の退職金は自分たちの子世代には残すのでしょう。個人的に身内に金残すために、不特定多数の将来の世代にツケを回すということに、なんか究極のエゴイズムめいたものを感じますな。
まあ私などは民間の零細企業にいますから、退職金なんて雀の涙。公務員の皆さんの半分以下です。それすらもこれからの会社の業績からすればどうなるかまったく不透明です。私なんぞは定年延長してとにかく体が動く間はとにかく働く、それくらいしか将来の展望ありません。それも後10年以内に訪れる将来なんではありますけど。
私の世代は、団塊世代より7〜10歳くらい下。ある意味団塊の下の世代です。この世代ってけっこうしんどい思いをしてきています。上がねいっぱいいるからポストもない、意思決定にもなかなか加われない。ようはずっと冷や飯食らってきた世代です。とにかく上が沢山いるから40過ぎてもけっこう諸雑用させられきたしね。それでいて団塊世代がここんとこ一気にいなくなったら、すごい量の仕事がいきなりふってくる。それでいてあんまり人が多くないから下からもつけ上げ食らったりみたいなね。
まあそんなことを思うにつけ団塊批判やっていると、ただの世代的呪詛みたいなものに矮小化されちゃうからどうにも嫌である。でも思うな。団塊にしろ、我々の世代にしろだけど、ある意味ろくなことやってきてはいないのだろうなと。総てが政治の問題に収斂されるとすれば、投票行動通じて政治を変える努力をしてこなかったということでしょう。将来の世代にツケを回すような今のあり方を作ることに加担してきた部分も多々あるのだろうとは思う。でもやっぱり頑張ってきたからもらうものは当然もらうというのは、どうにも納得できない。